コメット歯科クリニック事件(岐阜地方裁判所平成30年1月26日判決)

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コメット歯科クリニック

マタニティ・ハラスメント的な使用者の言動により精神疾患で休職していたXが、休職期間満了で退職扱いとされた事案において、当該精神疾患の業務起因性を認め、当該退職扱いは、Xが業務上の疾病にかかり療養のために休業していた期間にされたものであって、労働基準法19条1項類推適用により無効であるとされたほか、ハラスメント行為について、一定の不法行為が認定された裁判例

1 事案の概要

Xは、平成22年、歯科医院(以下「本件クリニック」)に歯科技工士として採用され、被告Y1(本件クリニックの院長)と期限の定めのない雇用契約を締結していた。Xは、平成25年12月末から産休および育休を取得し、平成27年1月に復職した。復職翌日から、被告らはXに労働条件の(不利益な)変更を申し入れ、Xはこれに同意しなかった。さらに、Xは平成27年1月中に第二子の妊娠が発覚したため、被告らに対してさらに産休および育休を取得したい旨申し入れた。Y2はXの仕事外しを職員に指示した。また,Y2は朝礼で暗にXを非難するような発言をした。さらに,平成27年2月に根拠の無い減給の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」)を行った。平成27年3月18日に早退して以降、体調不良(以下「本件精神疾患」)を理由に出勤せず、休職状態となったところ、被告Aは、就業規則所定の6カ月を満了したとして、平成27年9月16日をもって、Xを一般退職扱い(以下「本件退職扱い」)とした旨の通知を行った。そこで,Xは上記退職扱いが無効であるとしてY1に対する地位確認及び賃金の支払い,上記懲戒処分は無効であるとして減額された賃金差額の支払い,ハラスメントが不法行為に該当するとしてY1~Y3に対して慰謝料の支払い等を求めて訴訟を提起した。

2 コメット歯科クリニック事件判例のポイント

2.1 結論

Xの精神疾患発症はYらの言動によって精神的負荷を負った結果であるとして業務起因性を認め,労基法19条1項類推適用により上記一般退職扱いが無効であるとして、Xが労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、未払賃金の支払を命ずるとともに、被告らの行為の一部につき不法行為を構成する違法な嫌がらせと認定し,損害賠償請求の一部(退職扱いしたことにつきY1に100万円,ハラスメント発言をしたことにつきY1とY2に連帯して50万円)を認容した。

2.2 理由

1 本件懲戒処分の有効性

本件懲戒処分は、①労働局へXが虚偽の事実を申告したこと②Xが反抗的態度をとったこと③Y2が要求する報告書を提出しなかったこと④平成27年1月に育休明けの出勤日に出勤しなかったことを理由とする。しかし,①〜④の事実関係が存在するとは認められない。また、仮に被告らの主張する懲戒事由たる事実の一部やそれに類する事実が認められるとしても、減給という比較的重い本件懲戒処分に見合うような悪質性は認められない。
したがって、本件懲戒処分は、無効である。

2 Xの精神疾患の業務起因性

Yらによる①平成27年1月の復帰後,月給制から時給制への変更,手当の削減等不利益な内容の条件変更を要求されたこと,②新たな妊娠が発覚した後に歯科技工書をXに渡さないという仕事外しをしたこと,③根拠のない懲戒処分をしたこと,④朝礼で暗にXへの当てつけとも言える内容の発言をしたことが認められる。

Xは、Yらの行為によって精神的負荷を受けており、かつ、Xがもともと精神疾患を発症していなかった上、精神疾患を発症させるようなその余の事情も認められなかったことからすれば、これらの精神的負荷の積み重ねによって、Xが本件精神疾患を発症したものと優に推認できる。
以上によれば、Xの精神疾患の発症には、業務起因性が認められる

3 Xに対する各行為の違法性

被告Y2の各行為のうち、①Xの有給休暇の取得を拒絶したこと、②Xに対して技工指示書を渡さなかったこと、及び③朝礼においてXを非難する目的と評価できる例え話をし従業員らに挙手を求めたこと、については不法行為が成立する。
被告Y1は①につき最終の決定権者と認められ、②につき指示を出していたものと認められるため、被告Y1につき共同不法行為が成立する。また、③については、院長であるY1が使用者責任を負う。Y1とY2には慰謝料50万円(と弁護士費用5万円)の支払い義務が存する。

4 懲戒処分の違法性

本件懲戒処分は無効であり、被告Y1には本件における懲戒事由の不存在につき過失が認められる。よって、被告Y1の行った懲戒処分は違法であり、不法行為を構成する。

5 本件退職扱いの違法性

本件退職扱いは、Xが業務上の疾病にかかり療養のために休業していた期間にされたものであって、無効である(労基法19条1項類推適用)。
これに加え、Xの退職日につき一貫性がないこと、休職事由該当性の有無について特段の検討もしていないことからしても被告Y1の行った退職扱いは違法であり、不法行為を構成する。Y1には上記4の懲戒処分と併せて慰謝料100万円(と弁護士費用10万円)の支払い義務が存する。

3 コメット歯科クリニック事件の関連情報

3.1判決情報

裁判官:鈴木基之、中畑章生、足羽麦子

掲載誌:労働経済判例速報2344号3頁

3.2 関連裁判例

  • アイフル(旧ライフ)事件(大阪高判平24.12.13 労判1072号55頁)
  • 乙山青果ほか事件(名古屋高判平29.11.30 労判1175号26頁)
  • 損害賠償請求事件(大阪地判平30.3.1)
  • 損害賠償等請求事件(東京地判平27.10.2)

3.3 参考記事

4 コメット歯科クリニック事件の判例の具体的内容

判決内容詳細はこちら

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