イクヌーザ事件(控訴審・東京地方裁判所平成29年10月16日判決)判決内容

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主文

1 被告は,原告に対し,8366円及びうち8025円に対する平成27年6月1日から,うち29円に対する同月26日からそれぞれ支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

1 被告は,原告に対し,205万0194円並びに別紙1記載の各内金に対する同別紙の「年6%の遅延損害金算出の始期」欄記載の日から同別紙の「年6%の遅延損害金算出の終期」欄記載の日まで年6パーセントの割合による金員及び同別紙の「年14.6%の遅延損害金算出の始期」欄記載の日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は,原告に対し,205万0194円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告に対し,未払時間外,深夜割増賃金205万0194円並びに別紙1記載の各内金に対する同別紙の「年6%の遅延損害金算出の始期」欄記載の日から同別紙の「年6%の遅延損害金算出の終期」欄記載の日まで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金及び同別紙の「年14.6%の遅延損害金算出の始期」欄記載の日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条1項所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,労働基準法114条に基づく付加金205万0194円及びこれに対する本判決確定日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 争いのない事実

⑴ 被告

被告は,アクセサリー,靴,ベルト,貴金属製品等の企画,製造,販売等を営む会社である。

⑵ 雇用契約の内容

原告と被告は,平成26年1月6日,以下の内容の期間の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結した(なお,賃金に固定残業代が含まれるか否かについては,当事者間において争いがある。)。
ア 雇用形態   正社員
イ 就業場所   東京都渋谷区(以下略)
ウ 従事する業務 事業推進のためのアシスタント兼PRアシスタント業務
エ 勤務時間   午前9時から午後6時まで(休憩時間 正午から午後1時まで)
オ 休日     土曜日・日曜日・祝祭日・夏季休暇・年末年始
カ 賃金     23万円(平成26年4月16日以降は26万円)
キ 賃金支払時期 毎月15日締め当月25日払い

⑶ 原告は,平成27年5月31日,被告を退職した。

2 争点

⑴ 時間外,深夜労働の有無及びその時間数
⑵ 固定残業代の定めの有無及びその効力
⑶ 時間外,深夜割増賃金算定の基礎となる所定労働時間数,賃金額,時間単価
⑷ 未払時間外,深夜割増賃金の存否及びその額
⑸ 付加金支払の要否及びその額

3 争点に対する当事者の主張

〜省略〜

第3 当裁判所の判断

1 争点⑴(時間外,深夜労働の有無及びその時間数)について

⑴ 認定事実

前記争いのない事実,証拠(文末の括弧内に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 被告は,皮革製品,アクセサリー等の服飾雑貨の製造及び卸売等を営む会社である。また,A社長は,広告代理店業務,PR業務等を営むBの代表取締役にも就いており,同社は,ファッションブランドであるDやスポーツ関連商品を扱うEのPR業務などを行っている。(前記争いのない事実⑴,甲2,3の1・2,4,5,8,乙9,原告本人【1,2,7,8頁】,被告代表者本人【8頁】)
イ 原告は,平成26年1月6日,被告との間で本件雇用契約を締結し,同契約において,従事する業務について,事業推進のためのアシスタント兼PRアシスタント業務と定められていたところ,具体的には,A社長の下,被告及びBの業務全般についてサポート業務を行っていた。(前記争いのない事実⑵,甲2,3の1・2,甲4ないし8,乙9,原告本人【1,2,7,8,10ないし12頁】,被告代表者本人【8頁】)
ウ 被告は,タイムカードによって従業員の出退勤時間を管理し,これに基づいて,毎月,給与明細に時間外,深夜労働時間を記載している。
また,原告の平成26年3月16日から平成27年5月31日までの間のタイムカードにおける出退勤時間は,概ね,別紙2の「始業時刻」欄及び「終業時刻」欄記載のとおりであり(なお,上記タイムカードにおける出退勤時間は,機械により打刻されたもののほかに,手書きされたものもある。),これに基づく時間外,深夜労働時間は,同別紙の「タイムカードベース」の「時間外合計」欄及び「深夜合計」欄記載のとおりである。
なお,原告は,被告に出社した際は,基本的に機械でタイムカードに出退勤時間を打刻していたものの,打刻を怠った場合やBで業務した場合,取引先,イベント会場等に直行したり,直帰した場合には,後に手書きでタイムカードに出退勤時間を記載していた(もっとも,上記タイムカードには,機械による打刻時間の印字が薄いため,上から手書きでなぞった部分もある。)。
他方,原告の平成26年4月から平成27年6月支給分までの給与明細に記載された時間外,深夜労働時間数は,別紙2の「給与明細ベース」の「時間外合計」欄及び「深夜合計」欄記載のとおりであり,被告は,給与明細に記載された時間外労働時間数が80時間を超えた場合や深夜労働をした場合には,別紙3「既払い額」欄記載のとおり,時間外割増賃金ないし深夜割増賃金を支払っていた。(甲1の1ないし15,甲8,乙1の1ないし15,乙6,9,原告本人【6ないし8,11,12頁】,被告代表者本人【4ないし7,11,12頁】)

⑵ 判断

上記認定事実によれば,被告においては,タイムカードにより従業員の出退勤時間を管理し,これに基づいて,毎月,給与明細に時間外,深夜労働時間数を記載しているところ,原告についても,タイムカードに記載された出退勤時間に基づく時間外,深夜労働時間数と給与明細に記載された時間外,深夜労働時間数とは概ね一致している(別紙2の「タイムカードベース」欄,「給与明細ベース」欄参照)上,被告は,給与明細に記載された時間外労働時間(ただし,そこから被告が固定残業代の対象と主張する1か月80時間の時間外労働を控除した時間)及び深夜労働時間について,残業手当及び深夜手当を支払っているのであるから,少なくとも上記時間数については,被告自ら原告の実労働時間として承認していたものと解される。
これに対し,被告は,原告の業務は,時間外労働を要するようなものではない上,入社直後からタイムカードの打刻漏れが極めて多く,手書きされた出退勤時間と被告事務所のカードキーによるセキュリティーセットの時間が齟齬するなど,原告のタイムカードにおける出退勤時間には信用性が認められず,給与明細記載の時間外,深夜労働時間数も便宜上記載されたもので,実労働時間とは異なると主張する。
この点,原告のタイムカードの出退勤時間には手書き部分があること(上記認定事実⑴ウ),手書きされた出退勤時間と被告事務所のカードキーによるセキュリティーセットの時間には齟齬する部分があること(乙1の1ないし15,乙4)が認められるものの,上記齟齬は一部にとどまる(平成28年12月29日付け被告準備書面⑷の別紙「タイムカードと入退館情報一覧表の不整合」参照)上,原告は,被告の業務のほか,Bに関する業務にも従事しており(上記認定事実⑴イ),Bで業務した場合や取引先・イベント会場等に直行したり,直帰した場合には,後に手書きでタイムカードに出退勤時間を記載していたものと認められること(上記認定事実⑴ウ)に照らすと,原告のタイムカードにおける出退勤時間は概ね信用することができる。
また,被告においては,A社長ないし財務担当者が原告のタイムカードを毎月確認し,これを社会保険労務士に送付して,給与計算及び給与明細の作成を依頼していたことが認められる(甲1の1ないし15,被告代表者本人【6,7,11頁】)ところ,給与明細記載の時間外,深夜労働時間数が便宜上記載されたものと解することも困難である。
以上によれば,原告の平成26年1月6日から平成27年5月31日までの間の時間外,深夜労働時間数は,給与明細に記載された時間外,深夜労働時間数に基づき,別紙2の「給与明細ベース」の「時間外合計」及び「深夜合計」欄記載のとおりと認めるのが相当である。

2 争点⑵(固定残業代の定めの有無及びその効力)について

⑴ 乙2及び本件雇用契約書の成立の真正について

甲8(陳述書)における原告名の署名は,原告の自署によるものであり,印影は原告の印章によるものである(原告本人【1頁】)ところ,これと乙2の原告名の署名及び印影を対照すると,その筆跡及び印影は同一であることが認められ,乙2及びその元となった本件雇用契約書は真正に成立したものと推定される。

これに対し,原告は,本件雇用契約書について,被告入社の際,説明も受けずに複数の書面に署名押印をしたところ,この際,偽造されたものと考えられると主張する。
しかし,証拠(乙9,被告代表者本人【1,2頁】)及び弁論の全趣旨によれば,本件雇用契約書は,平成26年1月6日,本件雇用契約締結に当たり,A社長が原告に対し,その内容を説明した上で,原告が署名押印し,被告が記名押印した後,原告に渡され,被告はその写し(乙2)を所持していたものと認められ,原告の供述(甲8,原告本人【5,6,10頁】)に照らしてみても,本件雇用契約書が原告の意思に基づかずに偽造されたと認めることはできない。
したがって,乙2及びその元となった本件雇用契約書の成立の真正が認められる。

⑵ 認定事実

前記争いのない事実,証拠(文末の括弧内に掲記したもの。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア 本件雇用契約の当初の賃金等
本件雇用契約の平成26年1月6日から同年4月15日までの間の賃金の定めは,以下のとおりである。
(ア) 基本給23万円。ただし,基本給のうち8万8000円は月間80時間の時間外勤務に対する割増賃金とする
(イ) 割増賃金【125%】,法定休日勤務【135%】,深夜勤務【25%】(乙2,9,被告代表者本人【2頁】)

イ 平成26年4月16日以降の賃金等
本件雇用契約の平成26年4月16日以降の賃金の定めは,基本給26万円,ただし,基本給のうち9万9400円は月間80時間分相当の時間外勤務に対する割増賃金とするというものであった。
なお,A社長は,同月13日,原告に対し,上記昇給内容を説明し,乙5(写し)の元となった本件年俸通知書を交付した(同通知書は,従業員である原告に対し,昇給を通知するものであり,これに原告の署名押印がないとしても,特段,不自然とはいえない。)。 (乙5,9,被告代表者本人【3,4頁】)

ウ 被告は,上記ア,イの定めに基づき,原告に対し,平成26年3月16日から平成27年5月31日まで,上記ア,イの固定残業代を含む基本給を支払ったほか,1か月の時間外労働時間数が80時間を超えた場合や深夜労働をした場合には,別紙3「既払い額」欄記載のとおり,時間外割増賃金ないし深夜割増賃金を支払っていた。(甲1の1ないし15,被告代表者本人【6,7頁】)

⑶ 判断

ア 上記認定事実⑵アないしウによれば,本件雇用契約においては,80時間分の固定残業代として,平成26年1月から同年4月支給分までは8万8000円を支給し,同年5月から平成27年6月支給分までは9万9400円を支給すると定められ,これに基づき固定残業代が支給されていたものと認められる(なお,被告の賃金規程(乙3)第12条にも,固定残業代に関する定めが存在するものの,同賃金規程が原告を含む従業員に対し,周知されていたと認めるに足りる証拠はない。)。

イ これに対し,原告は,固定残業代の定めが有効とされるためには,その旨が雇用契約上,明確にされていなければならず,また,給与支給時にも固定残業代の額とその対象となる時間外労働時間数が明示されていなければならないところ,原告が受領した給与明細には,基本給に含まれる固定残業代の額及びその対象となる時間外労働時間数が記載されておらず,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外労働の割増賃金に当たる部分を判別することができないと主張するが,上記認定事実⑵アないしウのとおり,被告は,本件雇用契約における基本給に80時間分の固定残業代(8万8000円ないし9万9400円)が含まれることについて,本件雇用契約書ないし本件年俸通知書で明示している上,給与明細においても,時間外労働時間数を明記し,80時間を超える時間外労働については,時間外割増賃金を支払っていることが認められ,基本給のうち通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外労働の割増賃金の部分とを明確に区分することができるから,原告の上記主張は採用することができない。

また,原告は,本件雇用契約における平成26年4月16日以降の固定残業代の額も8万8000円であることを前提として,これは80時間分の時間外割増賃金額を大きく下回っており,給与支給時に固定残業代の額及びその対象となる時間外労働時間数が明示されていなければ,労働基準法所定の残業代が支払われているか否か不明となるとも主張するが,上記認定事実⑵イのとおり,同日以降の固定残業代は9万9400円である上,本件雇用契約における固定残業代は,年間休日日数の違いから,80時間分の時間外割増賃金額にわずかに足りない(平成26年1月から同年4月支払分につき1118円〔891.18円×1.25×80時間-8万8000円=1118円。時間単価については,下記3参照。以下同じ。〕,同年5月から同年12月支払分につき1391円〔1007.91円×1.25×80時間-9万9400円=1391円〕,平成27年1月から同年6月支払分につき975円〔1003.75円×1.25×80時間-9万9400円=975円〕)ものの,これにより上記固定残業代の定めが無効になると解することはできない。

さらに,原告は,被告が主張する固定残業代の対象となる時間外労働時間数は,本件告示第3条本文が定める限度時間(1か月45時間)を大幅に超えるとともに,いわゆる過労死ラインとされる時間外労働時間数(1か月80時間)に匹敵するものであるから,かかる固定残業代の定めは公序良俗に反し無効であると主張するが,1か月80時間の時間外労働が上記限度時間を大幅に超えるものであり,労働者の健康上の問題があるとしても,固定残業代の対象となる時間外労働時間数の定めと実際の時間外労働時間数とは常に一致するものではなく,固定残業代における時間外労働時間数の定めが1か月80時間であることから,直ちに当該固定残業代の定めが公序良俗に反すると解することもできない。

ウ 以上によれば,本件雇用契約における上記固定残業代の定めは有効である。

3 争点⑶(時間外,深夜割増賃金算定の基礎となる所定労働時間数,賃金額,時間単価)について

前記前提事実⑵及び前記2によれば,本件雇用契約における時間外,深夜割増賃金算定の基礎となる所定労働時間数,賃金額,時間単価は,以下のとおりとなる。

⑴ 所定労働時間数

ア 休日数
平成26年及び平成27年の原告の休日数は,以下のとおりである。なお,被告は,年間休日日数を123日と定めていると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
(ア) 平成26年 126日
土日104日,土日以外の祝日14日(1月1日,同月13日,2月11日,3月21日,4月29日,5月5日,同月6日,7月21日,9月15日,同月23日,10月13日,11月3日,同月24日,12月23日),夏季休暇・年末年始休暇8日(1月2日,同月3日,8月13日ないし同月15日,12月29日ないし同月31日)の合計126日
(イ) 平成27年 125日
土日104日,土日以外の祝日15日(1月1日,同月12日,2月11日,4月29日,5月4日ないし同月6日,7月20日,9月21日ないし同月23日,10月12日,11月3日,同月23日,12月23日),夏季休暇・年末年始休暇6日(1月2日,8月13日,同月14日,12月29日ないし同月31日)の合計125日
イ 1か月の平均所定労働時間数
(ア) 平成26年 159.34時間
(365日-126日)×8時間÷12か月=159.34時間(小数点第3位を切上げ)
(イ) 平成27年 160時間
(365日-125日)×8時間÷12か月=160時間)
ウ 基礎賃金額
(ア) 平成26年1月から同年4月支払分 月額14万2000円
23万円-8万8000円=14万2000円
(イ) 平成26年5月から平成27年6月支払分 月額16万0600円
26万円-9万9400円=16万0600円
エ 時間単価
(ア) 平成26年1月から同年4月支払分 891.18円
14万2000円÷159.34時間=891.18円(小数点第3位を四捨五入)
(イ) 平成26年5月から平成26年12月支払分 1007.91円
16万0600円÷159.34時間=1007.91円(小数点第3位を四捨五入)
(ウ) 平成27年1月から同年6月支払分 1003.75円
16万0600円÷160時間=1003.75円

4 争点⑷(未払時間外,深夜割増賃金の存否及びその額)

上記1ないし3によれば,被告の原告に対する未払時間外,深夜割増賃金額は,別紙4記載のとおり合計8054円となり,各支払時期から平成27年5月31日(原告の退職日)までの商事法定利率年6パーセントの割合による既発生遅延損害金の額は,別紙5記載のとおり合計312円となる。
なお,上記2⑵ウのとおり,被告は,本件雇用契約における固定残業代の定めに基づき,原告に対し,平成26年3月16日から平成27年5月31日まで,固定残業代(平成26年4月支給分につき8万8000円,同年4月から平成27年6月支給分につき各9万9400円)のほかに,1か月の時間外労働時間数が80時間を超えた場合や深夜労働をした場合には,別紙3「既払い額」欄記載のとおり,時間外割増賃金ないし深夜割増賃金を支払っていたことから,これらを未払時間外割増賃金額から控除する(控除額は,別紙4「既払い額」欄記載のとおり)。
以上によれば,被告は,原告に対し,8366円(8054円+312円=8366円)及びうち8025円に対する平成27年6月1日から,うち29円に対する同月26日からそれぞれ支払済みまで賃確法6条1項所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う。

5 争点⑸(付加金支払の要否及びその額)

労働基準法114条所定の付加金は,使用者に同法違反行為に対する制裁を科すことにより,将来にわたって違法行為を抑止するとともに,労働者の権利の保護を図る趣旨で設けられたものであり,付加金について裁判所が支払を命じることができる旨が規定されていることからすると,使用者による同法違反の程度や態様,労働者が受けた不利益の性質や内容,前記違反に至る経緯やその後の使用者の対応などの諸事情を考慮して,支払の要否及び金額を検討するのが相当である。
これを本件についてみるに,被告は,上記2⑵ウのとおり,原告に対し,固定残業代を支給していた上,支給対象の時間外労働時間数を超えて時間外労働をした場合や深夜労働をした場合には,別途,時間外,深夜割増賃金を支払っており,上記4の未払時間外,深夜割増賃金は,年間休日日数の違いから,少額の未払が生じたにすぎず,こうした事情を総合して考慮すると,本件においては,被告に対し,付加金の支払を命ずるのは相当でない。

第4 結論

よって,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるから,これを認容し,その余の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
なお,原告の仮執行宣言の申立てについては,その必要がないものと認め,これを却下する。