イクヌーザ事件(東京地方裁判所平成29年10月16日判決)

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固定残業代

月80時間の時間外労働に対する基本給組込型の固定残業代が有効と判断された裁判例

1 事案の概要

原告は,平成26年1月6日,アクセサリーや貴金属製品等の企画・製造・販売等を営む被告と雇用契約を締結し,平成27年5月31日に退職した。原告は,基本給に組み込まれていた月80時間の時間外労働に対する固定残業代が無効である等と主張し,被告に対し,時間外労働及び深夜労働に係る割増賃金並びにこれに対する遅延損害金,付加金の支払いを求めた。

2 イクヌーザ事件判例のポイント

2.1 結論

月80時間の時間外労働に対する基本給組込型の固定残業代が有効と判断した。

2.2 理由

1 明確区分性

(固定残業代の定めが有効とされるための基準を独自に判示せず)①被告は本件雇用契約における基本給に80時間分の固定残業代(8万8000円ないし9万9400円)が含まれることについて、雇用契約書ないし年俸通知書で明示している上、②給与明細においても、時間外労働時間を明記し、③80時間を超える時間外労働については、時間外割増賃金を支払っているとして、基本給のうち通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外労働の割増賃金の部分とを明確に区別することができると判断した。

2 公序良俗違反

被告は基本給に組み込まれる時間外労働時間数として1カ月80時間分を主張するところ、平成21年5月29日厚生労働省告示316号による改正後の平成10年12月28日労働省告示154号「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(以下「本件告示」)3条本文が定める限度時間(1カ月45時間)を大幅に超えるとともに、いわゆる過労死ラインとされる時間外労働時間数(1カ月80時間)に匹敵するものであるから、この固定残業代の定めは公序良俗に反し無効であると主張した。これに対し,裁判所は、1カ月80時間の時間外労働が上記限度時間を大幅に超えるものであり、労働者の健康上の問題があるとしても、固定残業代の対象となる時間外労働の定めと実際の時間外労働時間数は常に一致するものではなく、固定残業代における時間外労働時間数の定めが1カ月80時間であることから直ちに当該固定残業代の定めが公序良俗に反すると解することはできないと判断した。

3 イクヌーザ事件の関連情報

3.1判決情報

  • 裁判官:知野 明
  • 掲載誌:労働経済判例速報2335号19頁

3.2 関連裁判例

  • 高知県観光事件(最高裁二小判平6.6.13 労判653号12頁)
  • テックジャパン事件(最高裁一昌判平24.3.8 労判1060号5頁)
  • 国際自動車事件(最高裁三小判平29.2.28 労判1152号5頁)
  • 医療法人被告事件(最高裁二小判平29.7.7 労判1168号49頁)
  • ザ・ウインザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高判平24.10.19 労判1064号37頁)
  • 穂波事件(岐阜地判平27.10.22 労判1127号29頁)

3.3 参考記事

残業代は支払済みの給与に含まれているとの反論

4 イクヌーザ事件の判例の具体的内容

→判決文の詳細はこちら

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