退職金支給日

退職金の支払期日

社長
従業員Aが,来月末日,自己都合で退職することになりました。Aは,退職と同時に転居する予定なので,賃金および退職金を退職日に現金で直接支給してほしいと希望しています。当社の賃金規定では,毎月の給与は毎月10日締めの25日払いで,社員本人の預金口座に振り込むことになっています。また.退職金については,退職金規程でその半額を退職後7日以内に,残り半額を退職年金規程に基づき年金の受託会社が必要書類を受理した日から10営業日以内に本人の指定した預金口座に振り込むことになっています。
Aの希望にかかわらず,賃金・退職金とも規程どおりに支払っても問題ないでしょうか。
弁護士吉村雄二郎
労働基準法23第1項は,「使用者は,労働者の死亡または退職の場合において,権利者の請求があった場合においては,7日以内に賃金を支払わなければならない」と規定しています。これは労働者が退職した場合に,賃金,積立金その他労働者の権利に属する金品を迅速に返還させないと,労働者の足留策に利用されるおそれもあり,また,労働者または遺族の生活を窮迫させることとなり,さらに時が経つに従って賃金の支払や金品の返還に不便と危険を伴うこととなるので,これらの関係を早く清算させるため,退職労働者等権利者からの請求のあった日から7日以内に賃金その他の金品を返還させることとしたものです。賃金の支払い方法については,労基法施行規則7条の2の1項に規定され,労働者の同意を得た場合には,労働者が指定する預金口座への振込みの方法によることができます。ということは,労働者が預金口座への振込に同意しなければ,現金で支払わなければなりません。
退職金も労基法上の賃金に該当しますが,毎月払い,非常時払いの対象とされておらず,さらに,退職金制度を設けるか否かは事業主が自由に定めることができます。よって,毎月の給与の場合とは異なり,退職後請求があってから7日を経過しても,あらかじめ特定した支払期日が到来するまで退職金を支払わなくても労基法23条の趣旨に反するものではないと考えられます。行政解釈においても,退職労働者の請求があっても「退職金は,通常の賃金の場合と異なり,予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りる」(昭26.12.27 基収第5483号)としています。ご質問の場合,最初の半分については,そもそも退職後7日以内に支払うことになっていますから,この点を検討するまでもなく,問題はありません。残りの半額についても,あらかじめ定めた支払い時期に支払えば足ります。 退職金の支払い方法については,労働者の同意を得た場合には,預金口座への振込の方法によることができます(労基法施行規則7条の2の2項)が,同意が得られないときは現金で支払わなければなりません。なお,残りの半分については,契約に基づき年金受託会社が支払い責任を持つと思われますから,現金払いを強制することはできず,基本的には,契約に基づく支払い方法によるべきものと思われます。

 

労働問題に関する相談受付中

営業時間:平日(月曜日~金曜日)10:00~18:00 /土日祝日は休業