労働審判_弁護士費用

会社が労働審判の弁護士費用に関して知っておきたい4つのこと

会社が労働審判手続を弁護士に依頼する際、やはり費用は気になりますよね。もっとも、費用を公表していない弁護士も多く不安になられている経営者も多いかと思います。そこで、今回は労働審判を申し立てられた会社にかかる費用について分かりやすく説明したいと思います。

経営者のための労働審判対応

労働審判対応にかかる費用
>労働審判対応にかかる費用

弁護士に依頼しない場合

メリット:弁護士費用がかからずコスト節約になる

まずは、弁護士に依頼しない場合の費用について説明します。

① 弁護士費用

まず,弁護士を選任しない場合は,当然のことながら弁護士費用は発生しません。

② 出頭費用 裁判所への交通費程度

裁判所へ出向く費用は交通費くらいであり距離にもよるが数千円程度です。

なお,労働審判手続を利用する手数料は,申立を行った側、つまり通常は社員(労働者・申立人)側が裁判所へ納付することになっています。

会社側は,訴えられた側ですので、労働審判手続に参加する際に費用を負担することを通常は求められません(ただし、郵送費用を納めることを求められる場合もありますが、郵送費用なので高くても数千円程度です。)。

弁護士吉村雄二郎
以上のとおり,弁護士に依頼しない場合,弁護士報酬等の費用がかからない為,コストの節約になります。

デメリット:不利な結果になり労働者へ支払う金額が高額になる

しかし,その反面,答弁書や証拠の収集などを会社・社長自ら行う必要があります。

自分で法律や答弁書の書き方を調べながらやることを考えますと、100時間を超える作業量となる場合もあり重い負担となります。

また,法律的に正しい主張、会社にとって有利な主張なのかも常に不安が残ります。

一見、会社にとって有利な主張や証拠の様で、実際には会社に不利な主張や証拠である場合もあります。自社に不利な主張や証拠をわざわざ出してしまっているケースもあるのです。

さらに,労働審判手続で,会社の主張が認められなければ,社員(労働者側)の主張に沿った労働審判又は調停案が裁判所(労働審判委員会)から出されることになります。

その金額は少なくても数十万円,多くて1000万円を超えることもざらにあります。

多くの場合,社員(労働者)側は弁護士をつけて申立をしてきます。弁護士をつけて(弁護士費用を支払って)申し立てをしてくる以上,何らかの勝算があって行って行っている可能性が高いといえます。

そして,労働審判事件は非常に専門性の高い複雑な事件であり,会社側の素朴な意見や社長の感情論を訴えても,裁判所(労働審判委員会)に冷たくあしらわれることも多くあります。

そこで,会社側も法律的に論理武装した上で戦わなければ,社員(労働者)の言い値どおりの金額を払わされかねなません

他方で、労働審判手続の経験豊富な弁護士に依頼することによって,事案によっては数百万円の振り幅で結論が変わることだってあり得ます。

つまり,弁護士を頼まないことにより削減できるコストより(メリット),遙かに大きなコスト(デメリット)が発生する可能性が高いのです。

また,弁護士に依頼すれば,答弁書の作成や戦略の立案など,手続に関する作業は全て弁護士に任せることが出来ますし,何よりも心強い味方を得ることができますので,その分大幅に会社・社長の精神的な負担も減らすことができます。

そこで,次に弁護士を依頼することを前提とした費用について説明します。

労働審判の弁護士費用は一律に決まっている?

弁護士報酬は自由化されており,各弁護士が自由に報酬の基準を決めることができるようになっています。

かつては,弁護士報酬は日弁連が定めていた報酬規定(「旧報酬規定」と呼ばれています。)に従うこととされていました。

しかし,平成16年4月に改正され,弁護士報酬は自由化されました。

よって,依頼に際しては,各弁護士,各法律事務所が独自で定める報酬基準を確認する必要があります。ここは重要なポイントです。

ただ,現時点でも旧報酬規定に準拠している弁護士や法律事務所が多くあり,事実上報酬金の相場と言える場合が多いです。

そこで,本稿では,便宜上,旧報酬規定を参考として相場の説明を行うこととします。

※ 報酬金額は弁護士や事務所によって異なり厳密な意味での相場というものは存在しません。上記記事の具体例はあくまでも参考として理解していただき,実際には各弁護士・法律事務所に見積を取得するなどして確かめてください。

会社が労働審判を弁護士に依頼する際にかかる弁護士費用の種類と相場について

会社が労働審判を弁護士に依頼する際にかかる費用は,次の4つです。

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 報酬金
  4. 実費

この一般的にはこの4つの費用の合計が弁護士に相談・依頼する際に発生する費用となります。

①相談料

⑴ 相談料とは?

弁護士に法律相談する対価として支払う弁護士費用をいいます。

⑵ 相談料の相場は?

相談料の相場としては、企業側の労務問題という特殊専門分野については、顧問契約がない場合で  1万9287円(税込) が平均額とされています 1

顧問契約がある場合は上記より低い金額又は無料であることが通常です。

⑶ 無料法律相談もある

法律事務所によっては初回の相談料を無料にしているところもあります。

②着手金

⑴ 着手金とは?

着手金とは、弁護士が労働審判手続の委任を受ける対価として、依頼をする当初に支払う必要がある費用です。

弁護士の職務に対する対価の前払い分ということになります。

この金額は,弁護士の職務に対する最低限の対価という意味を持つことも多く,途中で弁護士の依頼を取りやめた場合でも返還されないことが多いです。

⑵ 着手金の相場は?

着手金は経済的利益によって以下のとおり定められることが多いです(旧報酬規定)。

経済的利益の額着手金
300万円以下の場合8%+消費税
300万円を超え、3000万円以下の場合5%+90,000+消費税
3000万円を超え、3億円以下の場合3%+690,000円+消費税

着手金における経済的利益とは,社員(労働者)が労働審判手続申立書において会社に対して請求している金額となるのが一般です。

具体例1(残業代請求事件の場合)

社員(労働者)が会社に対して,残業代500万円と遅延損害金を請求してきた場合

経済的利益:5,000,000円

着手金の額:5,000,000円 × 5% + 90,000円  + 消費税(34,000円)=374,000円

具体例2(地位確認請求事件の場合)

月収30万円の社員(労働者)が会社に対して解雇の無効を主張して地位確認と解雇後の賃金を請求してきた場合

経済的利益:地位確認(360万円)+賃金請求(360万円)=7,200,000円

着手金の額:7,200,000円 × 5% + 90,000円 + 消費税(45,000円)= 495,000円

※地位確認は算定不能につき最大で800万円と算出されます。具体的には委任時に当事者で協議して決めることになります。上記では月給の1年分(360万円)としています。

※賃金請求は継続的給付債権として債権総額の10分の7(期間不定のものは7年分)が目安とされています。具体的には委任時に当事者で協議して決めることになります。上記では月給の1年分(360万円)としています。

⑶ その他の算出方式

① タイムチャージ方式

時間単価を設定して,受任事件に関する弁護士の所用時間を乗じて報酬を算出する方式です。対応する事件にかかる時間が読みにくい案件に用いられるほか,企業法務系の大手法律事務所において採用される方式です。

単価は弁護士・法律事務所によって区々で,リーズナブルな事務所で約2万円~3万円/時間,大手法律事務所で5万円~10万円/時間とされることもあります。

② 固定費用方式

着手金・報酬金を固定して設定する事務所も希ながら存在する。

上記旧報酬規定による算出やタイムチャージ方式では,最終的な企業のコストが見えにくいというデメリットがあります。

そこで,報酬を一定額の固定で提示されることは企業によって予算管理上極めて合理性があります。

当事務所(吉村労働再生法律事務所)では,着手金について固定報酬制(着手金税込33万円)を採用しています。

報酬金

⑴ 報酬金とは?

報酬金は、事件の終了後に発生する費用です。

⑵ 報酬金の相場

報酬金の相場も,旧報酬規定では経済的利益によって定められることが多いといえます。

経済的利益の額報酬金
300万円以下の場合16%+消費税
300万円を超え、3000万円以下の場合10%+180,000+消費税
3000万円を超え、3億円以下の場合6%+138万円+消費税

報酬金における経済的利益とは,社員(労働者)が労働審判手続申立書において会社に対して請求している金額から実際に会社が支払うことになった金額の差額となるのが一般です。

具体例1(残業代請求事件の場合 ※着手金の例参照)

社員(労働者)の請求額500万円していたところ、労働審判又は調停により残業代100万円の支払いを命じられた場合

経済的利益:社員(労働者)の請求額500万円-100万円(調停又は労働審判)=400万円(支払を免れた)

報酬金の額:400万円 ×10% + 180,000円+ 消費税(58,000円)=638,000円

着手金との合計:920,000円(税抜き)+消費税

具体例2(地位確認請求事件の場合 ※着手金の例参照)

労働審判又は調停により解決金180万円(月給の半年分)の支払いを命じられた場合

経済的利益:社員(労働者)の請求額720万円-180万円(調停又は労働審判)=540万円(支払を免れた)

報酬金の額:540万円 × 10% + 180,000円+ 消費税(72,000円)=792,000円

着手金との合計:1,170,000円(税抜き)+消費税

※地位確認と賃金請求の経済的利益の考え方は上記着手金の例をご参照ください。

⑶ その他の算出方式

① タイムチャージ方式

時間単価を設定して,受任事件に関する弁護士の所用時間を乗じて報酬を算出する方式です。対応する事件にかかる時間が読みにくい案件に用いられるほか,企業法務系の大手法律事務所において採用される方式です。

単価は弁護士・法律事務所によって区々で,リーズナブルな事務所で約2万円~3万円/時間,大手法律事務所で5万円~10万円/時間とされることもあります。

具体例

労働審判手続に関して発生した弁護士の所要時間が60時間の場合

120万円~600万円(税抜き)

② 固定費用方式

前記のとおり着手金・報酬金を固定して設定する事務所も希ながら存在します。

実費

⑴ 実費とは?

弁護士が受任事件を処理する為に必要な費用です。例えば,交通費,郵送料,印刷料,手数料等になります。

⑵ 実費の相場は?

実費は実際にかかった費用ですので,予め定められることは希ですが,概ね数万円の範囲であると考えられます。

⑶ 当事務所(吉村労働再生法律事務所)の場合

平均して2万円~3万円程度のことが多い。

会社が労働審判の弁護士費用を決める重要なポイント

事前に見積をもらう

上記のとおり弁護士費用は弁護士・法律事務所によって基準や金額が異なります

また,報酬金額の基準が存在して,ホームページ上に明記されていても,最終的にどの程度の金額になるのかが一般の皆様には分かりにくいことが多いでしょう。ホームページ上に基準すら掲載していない弁護士・法律事務所も多いのが実情です。

これでは,会社として,予算が立てられず,依頼に際して不安を持つのも無理はないといえます。

そこで,依頼を検討している弁護士・法律事務所に対して,遠慮することなく,事前に必ず見積書を発行してもらいましょう

現在の弁護士報酬に関する日弁連の規程においても,

第4条 弁護士等は、法律事務を依頼しようとする者から 申出があったときは、その法律事務の内容に応じた報酬見積書の作成及び交付に努める。

との規定がなされています。

つまり,報酬見積書の作成・提出は弁護士等の義務となっているのです。

費用対効果を考えつつも,信頼できる弁護士に依頼する

弁護士費用が分かっても,金額だけで弁護士を選ぶわけにはいきません

いくら弁護士報酬が安くても,会社にとって最善の弁護活動が出来ないのであれば,却って会社に損害が発生することもあります。

弁護士の力量によって,結論が左右されるという事件を筆者な何度も実体験してきました。

特に結論が見えない事案においては,弁護士の能力や経験の差によって結論が左右することも実際には存在します。

そこで,弁護士報酬の金額のみならず,その弁護士が信頼に足るかを見定めて,決定するべきでしょう。

その為には,依頼を確定する前に、まずは弁護士に相談をしましょう。

会社として不安に思っていることや,疑問点を遠慮せずにぶつけてみてください。

担当弁護士の経験(これまで担当してきた事件や解決実績など)専門性(労働法の専門雑誌への寄稿の有無や本数など)を聞いても良いでしょう。

そして,回答の内容や回答する際の弁護士の表情などを良く観察してください。

この弁護士に任せても良いと思える弁護士に依頼をするべきでしょう。

最後は会社としての「人を見る目」で判断した方が正しいことも多いといえます。

いくら立派な経歴や解決実績を並べている弁護士であっても,規模の大きい法律事務所の弁護士であったとしても,「話を聞いてくれない」「ちょっと人としてどうかな」「何か違和感があるな」と思うのであれば,依頼をする必要はありません。直感があたっていることも多いのです。

依頼をせずに相談だけで終わらせても,依頼の義務はありませんし、発生するとしても相談料だけです。

参考記事

会社必見!労働審判を依頼する弁護士の選び方

まとめ

今回は会社の労働審判の費用について説明してきたが、いかがでしたでしょうか?

今回の話が会社の労働審判費用について知りたい会社・社長のご参考になれば幸いです。

吉村労働再生法律事務所:会社側の労働審判対応

当サイト運営法律事務所による労働審判対応についてのご案内です。

明確かつ合理的な費用

弁護士費用

着手金
330,000円~
報酬金
経済的利益の11%~22%
実費
3万円

備考

  • 顧問契約先は減額いたします(10%~20%)
  • 先にコンサルティングの依頼をなされている場合は減額致します(10%~20%)
  • 労働者1名の金額です。労働者複数名の場合は別見積(同時進行の場合は減額致します)
  • 労働審判異議後の訴訟は別対応になりますが、訴訟対応は10%~30%範囲で減額いたします。

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その他解決実績の詳細は

会社側 労働審判等の弁護士による解決実績

会社側労務対応に関する専門性

原則としてご依頼の全案件は吉村が対応させて頂きます。

弁護士登録後、多数の労働事件を取扱い、労働専門誌への寄稿、メディアへの出演多数。

弁護士の経歴は

弁護士紹介

 

  1. 日本弁護士連合会「中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版](2009年)

労働問題に関する相談受付中

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