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吉村労働再生法律事務所
〒101-0053東京都千代田区神田美土代町11-12
ニチヨビル6F
平日(月〜金)10:00~18:00
TEL 0120-3131-45
FAX 03-3518-6059
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労働審判は初回期日に全ての主張・証拠が出され,労働審判委員会による心証が形成されます。そして,この心証に従って調停や労働審判がなされます。つまり,初回期日こそが勝敗を決する天王山であり,全ての勢力を結集しなければなりません。しかし,初回までの準備期間は約1ヶ月程度しかありません。つまり,1ヶ月の短期間に全勢力を集中して準備をしなければなりません。限られた時間の中で最大限の効果を発揮する為の準備及びスケジューリングがまずは重要です。
勝負となる第1回期日で有利な心証を得るためには,充実した主張・立証が不可欠です。労働審判手続は普通の訴訟と異なる特殊な手続ですので,その特殊制に配慮して主張・立証を行う必要があります。特に答弁書を充実させる必要が非常に高くあります。というのも,民間の労働審判委員は事前に裁判所から送られてくる資料を熟読した上で労働審判に参加します。現在の裁判所実務では,民間人である労働審判委員に事前に送付されるのは答弁書だけで,証拠書類は送付されない取り扱いとなっているからです。従って,証拠書類を確認せずに,答弁書だけで経営者側の主張立証が伝わるように配慮する必要があるのです。
労働審判委員会の心証形成は,事前に提出する書面の他,期日における労働審判委員会に対するプレゼンテーションによりなされます。従って,プレゼンテーション力がなければ経営者に有利な心証を勝ち取ることは不可能です。また,労働審判手続は,そのほとんどが調停(話し合い)で解決がなされます。調停では,労働審判委員会は企業側に大幅な譲歩をさせた上で解決を図ろうとする傾向がありますので,企業側に不利にならないように適切な解決水準を方向付ける必要があります。
3つのポイントを理解し,徹底することにより経営者側は,勝訴(申立棄却の労働審判)することも十分可能です。また,調停する場合であっても,経営者側の金銭的負担(和解金の額)を大幅に低減することが可能です。つまり,仮に企業側が一定の金銭の負担をしなければならない場合であっても,訴訟などの場合に比べて企業が支払う解決金・和解金の金額レベルを大幅に下げることが可能なのです。そして,このような成果が得られる場合,訴訟などに比べ短期で終結する労働審判は,むしろ経営者側に有利な手続となります。
専門家なしで労働審判に臨むのは,武装せずに戦場に向かうのと同じく非常にリスクがあります。法律上,労働審判の代理権限があるのは原則として弁護士だけです。労務を取り扱う職種として社労士がありますが,社労士は労働審判の代理権限がありませんので,代理人として労働審判に立ち会うことはできません。顧問社労士の立場で労働審判の場に居ることが許可されることも例外的にありますが,労働者側より異議が出されれば,労働審判に参加することすらできません。
労働審判を起こされた経営者は,労働審判を起こされたというだけで精神的に不安に陥り,また,当然のことながら通常の業務を滞りなく行わなければならず,とにかくお忙しいことでしょう。経営者や人事担当者みずから法律・裁判例の調査をし,証拠の収集をしたり,答弁書を作成する時間的・精神的なゆとりはないはずです。そのような経営者・人事担当者に代わって弁護士は,情報収集のお手伝いをし,答弁書の作成,証拠書類の作成などを責任をもって行います。これにより,煩わしい負担が大幅に軽減され,かつ,精神的にも安心が得られます。
労働審判も裁判であり,非常に複雑かつ困難な技術が必要とされます。日常的に裁判業務に携わっている弁護士でなければ,裁判の見通しを付けることは不可能です。また,労働審判では,民間から選ばれた労働審判員も2名いますが,実際には裁判官である労働審判官が最も重要な鍵を握ります。そして,裁判官の心証が勝敗を決することが多いのが実情です。裁判官がどのような間接事実や証拠を重視するのかは,日常的に裁判業務を行っている弁護士しか分かりません。労働法に詳しいはずの社労士がしばしば裁判の見立てを誤るのは,裁判がどのような間接事実や証拠から事実が認定されるのかを実際の経験知として理解することができないことが原因です。
即戦力として期待していた中途採用の女性社員(高学歴)が,業務命令に度々違反し,周囲の従業員との協調性に欠ける等,会社の期待した水準を遙かに下回るパフォーマンスしか発揮できなかった。会社は再三指導したが,改善の姿勢がなかった為,採用後1年経過しないうちに解雇を行った。従業員は,解雇の無効等を主張し,地位確認等労働審判請求を提起した。
- 労働者側は,解雇の無効を主張し,賃金1年分相当の金銭を要求していた。
- 会社側は,解雇の正当性を基礎付ける証拠を積み上げ,解雇の理由を積極的に主張立証を行った。
- 労働審判委員会は,法律論としては採用後半年未満での解雇の正当性は認められないとしつつも,会社側の証明した労働者の落ち度も認定し,最終的な解決金額については,半年分未満の金額を調停案として提案した。
- 会社側は,訴訟の場合における解決金水準(1年分)を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
アルバイトで採用した男性従業員が,無断欠勤・遅刻を繰り返す為,再三にわたって注意指導したが,全く態度を改善させなかったため,勤怠不良を理由に普通解雇した。ところが,従業員が地位確認,賃金支払を求めて労働審判を申し立ててきた。請求内容は,解雇後の賃金,慰謝料,弁護士費用など合計約360万円に上っていた。
- 労働者側は,解雇の無効を主張し,合計約360万円の金銭を要求していた。
- 会社側は,無断欠勤の多さを示す出退勤管理表など解雇の正当性を基礎付ける証拠を積み上げ,解雇の理由を積極的に主張立証を行った。
- 労働審判委員会は,法律論としては解雇の正当性は認められないとしつつも,会社側の証明した労働者の勤怠不良状況を認定し,最終的な解決金額については,労働者の請求額を大幅に下回る金額を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者側の請求金額を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
この度は,本当にありがとうございました。労働審判というものは全く初めてでして,どのように対応したら良いか全く分かりませんでした。また,吉村弁護士に相談する前に,他に2つの法律事務所に相談したが,「慣れていない」,「期日が迫っていて無理」などとの理由で断られてしまって,本当に途方に暮れていました。労働審判期日が1週間前に迫り,もう何もかも投げ出してしまい,会社も畳んでしまおうかとも考えていましたところ,ホームページで労働問題にお強いとのことで,藁にもすがる気持ちで,吉村先生に相談しました。吉村先生は,丁寧に当社の事情を聴いて下さり,具体的な対応策を明確にお示し頂きました。吉村先生以外に頼る弁護士も居ませんでしたので,何とかお願い致しました。吉村先生は,直ちに対応を取って頂き,当社の事情を踏まえた上で,説得力のある対応をして頂きました。その結果,従業員の請求を85%も削減する金額による調停で終わらすことが出来ました。期日が切迫しているにも関わらず,このような結果を得られて大変満足しています。今後も継続的に相談をお願いします。
特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人と常勤医契約をしていた医師がいたが,勤務場所を不在にすることが多く,投薬の処方箋の作成が遅れるなど勤務態度が極めて悪く,再三改善の機会があったにもかかわらず,改善することがなかった。そこで,そこで,法人は施設入所者・利用者の健康及び安全な生活を守るために,医師との常勤医契約を解除したのであった。医師は不当解雇だとの理由で地位確認,賃金支払の労働審判を提起した。
- 医師側は,解雇の無効を主張し,合計約1000万円の金銭を要求していた。
- しかし,社会福祉法人は元々上記医師が設立したものであり,かつ,常勤医契約をしながら,同じ敷地内に自己の医院を経営するなど,労働者とは言い難い状況があった。
- 法人側は,医師が解雇権濫用法理の適用される労働者ではないことを,その勤務実態について丁寧に証拠を積み重ね主張を行い,労働審判委員会に対してプレゼンテーションを行った。
- その結果,労働審判委員会は,当該医師は労働者に該当しないとの心証を勝ち取り,申立人の請求棄却の労働審判を得た(審判は確定した。)。
この医師は,勤務態度や能力の他にも,様々な問題がありました。職場に復帰されたら会社の風紀が乱れ,どうしようかと夜も眠れないくらいに悩んでいました。そうしたところ,吉村先生を紹介頂き,対応をお願いしました。その選択が当たりでした。吉村先生は何度も当社にお越し頂き,複数の従業員のお話を丁寧に聞いて下さり,膨大な資料をチェックされ,当社の主張・立証を完璧に行って頂きました。その結果,完全勝訴となる,申立棄却の労働審判を獲得することができました。当社としては,これ以上にない結論に大変満足しております。今後も相談させていただきたいと存じます。
即戦力として期待して中途採用した男性営業職が,営業実績を偽装するために架空の取り引きを行って,会社に莫大な損害を生じさせた。そこで,会社はその営業社員を懲戒解雇し,損害の賠償を求めることにした。ところが,同社員は弁護士を選任して,高額の残業代(約400万円)の支払を求めて労働審判を提起した。
- 労働者側は,合計約400万円の金銭を要求していた。しかし,タイムカード等労働時間を証明する証拠は一切提出できなかった。
- 会社側は,労働者が残業をしていなかった実態を示す業務日報等の証拠を積み上げ,残業代が発生していないことを積極的に主張立証した。
- 労働審判委員会は,一定の残業代は発生したのではないかとの心証を持ちつつも,会社側が指摘するとおり労働者の証明不足は否めないとして,最終的な解決金額は,労働者の請求額を大幅に下回る金額を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者による各取引による損害賠償と相殺することを提案し,最終的には,解決金額を30万円とし,かつ,この30万円は損害賠償請求と相殺する旨の調停が成立した。従って,会社は労働者への残業代の実質的な支払は0であった。
この度は,大変お世話になりました。会社に損害を与えた上に,残業代を請求するなど,到底受け入れられる話ではありませんでした。ただ,当社の労務管理が甘い部分があり,法律的には残業代を相当支払わなければならない事情もありました。しかし,吉村先生に適切に対応していただき,最終的には相手方の請求を90%削減する形で話し合いをまとめて頂きました。また,当社の労働者に対する損害賠償請求との相殺との約束も取り付けて頂き,当社にて新たに金銭を拠出する必要はなくなりました。これは一つの勉強の契機だと思い,労務管理を始め,今後とも継続的にご指導をお願いします。
アルバイトで採用した女性従業員が,怠業や他の従業員との協調性を欠くなど勤務態度が非常に悪質であったため,再三にわたって注意指導したが,全く態度を改善させなかった。そこで,会社は,勤怠不良を理由に退職勧奨を行ったところ,同社員はそれに応じ,有給を消化して退職した。ところが,従業員は不当解雇をされたなどとして,地位確認,残業代支払を求めて労働審判を申し立てた。請求内容は,解雇後の賃金,残業代など高額に上っていた。
- 労働者側は,解雇の無効を主張し,高額の金銭を要求していた。
- 会社側は,労働者が退職に至った経緯などを他の従業員の供述などを積み上げ積極的に主張立証した。また,残業については,手待時間・休憩時間の存在について他の従業員の供述や資料に基づいて立証した。
- 労働審判委員会は,法律論としては解雇の存否については不明との心証を示しつつも,退職の事実についても不明であるとした。また,残業については,現実的な拘束時間がもともと長く,タイムカード上も明らかであるため認めざるを得ないとした。最終的な解決金額については,証拠上明らかな残業時間についての残業代+退職に代わる解決金として請求金額の2分の1を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者側の請求金額を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
この度は,本当にありがとうございました。労働審判を起こされ大変困っていたこと,丁寧かつ迅速にご対応いただき,最終的には満足の行く結果となりました。また,当社の労務管理関係の規定についても各種アドバイス頂き,今後の再発防止にも有益な対応をいただきました。今後とも宜しくお願いします。
公衆施設を運営していた会社において,長年にわたり雇用していた労働者がいた。時代の流れにより施設の運営も厳しくなったため,惜しまれつつも施設は廃業することになった。それに伴い,当該労働者の相応の退職金を支払った上で退職してもらった。ところが,同労働者は,残業代支払を求めて労働審判を申し立てた。請求内容は,残業代等合計約1000万円を超える金額に上っていた。
- 労働者側は,解雇の無効を主張し,合計約1000万円を超える金額を要求していた。
- 会社側は,実際の労働者の労働実態を詳細に示し,休憩時間等の不就労時間が多く存在したことを証明した。
- 労働審判委員会は,会社の証拠及び労働審判期日におけるプレゼンテーションを受け,現実的な労働時間は労働者の主張よりかなり短いものと認定した上で,最終的な解決金額については,証拠上明らかな残業時間についての残業代を相当程度減額した金額を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者側の請求金額を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
円満に退職したはずの従業員から残業代を請求され大変驚きました。ただ,知人から紹介頂いた貴事務所には迅速に対応いただき,最終的には納得のいく解決となり大変感謝しております。
営業職として中途採用した男性営業職が,業務命令に背き社内秩序を乱す発言を繰り返していたため,会社はその営業社員を懲戒解雇した。ところが,同社員は,弁護士を選任して,高額の残業代等合計600万円の支払を求めて労働審判を提起した。
- 労働者側は,合計約600万円の金銭を要求していた。しかし,証拠として提出したタイムカードには打刻されていない日が多く,その部分は労働者が作成した手帳を証拠として提出していた。
- 会社側は,労働者が残業をしていなかった実態を示す業務日報等の証拠を積み上げるとともに,タイムカードが打刻されていない部分は残業代が発生していないことを積極的に主張立証した。また,会社は残業代として支払う趣旨で多額の賞与を支払っており,残業代は支払済みである事を主張した。
- 労働審判委員会は,タイムカード上明らかな残業については残業代が発生したとの心証を持ちつつも,会社側が支払っていた多額の賞与を残業代の趣旨として一部組み入れることを認め,最終的な解決金額は,労働者の請求額を大幅に下回る金額を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者側の請求金額を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
多額の賞与を残業代として支払っていたにも関わらず,それが認められず非常に残念です。しかし,それは当社に法律上の不備があったからであり,反省しております。今後は,二度とこのような事態にならないよう,労務管理を徹底して参りたいと思います。今後ともご指導のほど宜しくお願いします。
新卒で採用した社員らが,入社2年も待たずに退職しました。当社は手作業による製品のメーカーであり,クラフトマンシップに基づいて厳しい指導を行い,また,希望する者にはアーティストとしての素養も伸ばすべく指導をしてきました。ところが,退職した従業員らは,指導を受けていた時間は全て労働時間であったなどと主張し,合計約440万円にも上る残業代を請求する労働審判を提起してきた。
- 労働者側は,合計約440万円の金銭を要求していた。しかし,タイムカード等労働時間を証明する証拠は一切提出できなかった。
- 会社側は,労働者が残業をしていなかった実態を示す業務日報,作業進捗表等の証拠を積み上げ,残業代が発生していないことを積極的に主張立証した。
- 労働審判委員会は,一定の残業代は発生したのではないかとの心証を持ちつつも,会社側の反証を有効なものと認め,最終的な解決金額は,労働者の請求額を大幅に下回る金額を調停案として提案した。
- 会社側は,労働者側の請求金額を大きく下回る労働審判委員会の提案を受け入れ,早期解決を優先して解決した。
さんざん目をかけて育てた社員に訴えられるというのは非常につらい思いがあります。クラフトマンとしての厳しくも優しく指導してきたつもりでした。ただ,そのような感慨はもはや通用しないのかもしれません。今後は二度とこのような事態にならないよう,改めて労務管理体制を厳しく見直したいと思います。結果については,労働者の請求の大部分を退けるものであり大変満足しています。これからも中小企業を救う為に頑張ってください。
担当者からご希望の連絡先へご連絡申し上げてスケジュールを調整のうえ、ご相談日時を決めさせて頂きます。
9:30~21:00
9:00~20:00
相談前に、相談担当者より御社の状況を簡単にヒアリングさせていただきます。また簡単に記入できるご相談フォームをメール又はファックスにてご記入いただきます。また、次のような資料をご持参いただきます。
- 1.就業規則(賃金規程,懲戒規定)
- 2.雇用契約書
- 3.労働協約
- 4.会社全部事項証明書
- 5.会社案内,パンフレット
- 6.賃金台帳
- 7.解雇通知書,解雇理由証明書
- 8.財務諸表,決算書
- 9.タイムカード
- 10.懲戒処分通知書
- 11.休職辞令書
- 12.採用通知書
- 13.退職金規程
担当弁護士が,親身になって経営者・社長・人事担当者のご相談を伺います。どんな些細なことでもお話し下さい。
解決の方法はケースバイケースですが、複数の解決案をお示しし、メリット・デメリット・コストなどを踏まえて、分かりやすくご説明し、具体的な解決案をご提案致します。
ご依頼される場合の弁護士費用の見積もりを明確にご提案致します。
この時点でご依頼する必要は全くありませんので、持ち帰って慎重にご検討いただいております。
もちろん、直ちに契約することも可能です。
お客様のご要望を十分に伺い、費用・基本的な弁護方針を明確にした上で、会社と弁護士との間で,委任契約書を取り交わします。
契約後、弁護士は直ちに会社の代理人として、弁護活動を開始します。
会社に代わって弁護士は、情報収集、書面の作成、通知書の発送、従業員・労働組合・労働者側弁護士・労基局と交渉致します。また、従業員が労働審判・仮処分・訴訟などの裁判を起こしてきた場合は、直ちに、会社に代わって適切な対応を行います。
労働審判は,どういう手続なのですか?
労働審判制度は,個々の労働者と使用者との間に生じた労働関係に関する紛争を,裁判所において,裁判官である労働審判官1名と,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が審理し,適宜調停を試み,調停がまとまらなければ,事案の実情に応じた解決をするための判断(労働審判)を行う手続です。
労働審判の他の裁判手続と比較した特徴は?
①1名の職業裁判官(労働審判官)に加え,労働現場に精通した労使選出の労働審判員が(労働者側,使用者側各1名)が審理を行う専門性。
② 原則3回以内の期日で審理を終結させる迅速性(概ね申立から3ヶ月程度)
③ この3回の期日の中で,争点整理や証拠調べが行われるとともに,調停を試みて,調停が成立しない場合には,権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決を図るために相当な労働審判を言い渡せる柔軟性。
労働審判は会社にとって不利な手続なのですか?
確かに,対応するに際してタイトなスケジュールで対応しなければならないというデメリットもあります。しかし,適切な対応によって,訴訟で対応する場合に比べて,
① 早期解決による負担の軽減,
② 解決水準の低減,
③ スピーディに対応できれば十分反論反証が可能,
というメリットもあります。
労働審判が終了するまでの期間はどのくらいですか?
申立から終結まで,2ヶ月~3ヶ月程度で終了するケースが多いです。
常に3回行うのですか?また,延長はないのですか?
常に3回行うわけではありません。通常は,1回目で審理が終了し,話し合いも行われます。2回目以降は話し合いの調整の為に行われ,2回目までで終了するケースも多くあります。
また,事案によっては,例外的に3回目以降,延長されることもあります。
労働審判の第1回期日までに会社側が準備するべき事項は?
① 答弁書の作成
② 提出する証拠の厳選
③ 同行する会社関係者の選定
審尋への対応
④ 話し合いによる解決の可否
譲歩ラインの検討
第1回期日までの会社側のポイントは?
第1回期日までは30日~40日,そして答弁書の提出期限までは20日程度しかありません。しかも,その期限までに万全の状態で望まなければなりません。従って,時間が非常にタイトであり,スピーディに対応できる弁護士の選任が不可欠です。
答弁書は何を記載しなければなりませんか?
記載事項(労働審判規則16条1項)
① 申立の趣旨に対する答弁
② 申立書に記載された事実に対する認否
③ 答弁を理由付ける具体的事実
④ 予想される争点及び
当該争点に関連する重要な事実
⑤ 予想される争点ごとの証拠
⑥ 当事者間においてされた交渉
答弁書作成のポイントは?
裁判所から労働審判員に事前に送付されるのは申立書・答弁書のみです(証拠の交付は想定されていない。規9Ⅳ,16Ⅲ)。従って,答弁書の記載だけで会社側の主張が理解出来るような工夫をする必要があります。この点は,訴訟における答弁書とは異なります。
証拠についてのポイントは?
期日で証拠書類を確認する時間は殆どありません。従って,労働審判員が審判期日の際に見て、内容等をすぐに理解できるようなものに厳選する必要があります。また,証拠内容を要約・抜粋して答弁書に記載するという工夫も必要です。
会社側では審判期日に誰を同行するべきでしょうか?
① 争点となる事実関係を説明できる人物
例:上司、同僚、交渉を担当した人事担当者
② 決裁権限を有する人
例:社長,総務部長など
誰も連れて行かないということでも大丈夫ですか?
① 事実関係を説明出来る人は,いわば証人です。証人を連れて行かないことで,労働審判委員会の心証が悪くなる恐れがあります。
②決裁権限を有する人は,必ずしも同行しなくても大丈夫ですが,少なくとも電話で連絡がとれる状態は確保した方がよいでしょう。労働審判では話し合いの解決が殆どですので,最終的な決裁を電話で行い,スピーディに調停を成立させることが可能になるからです。
審尋のポイントは?
① インパクトのある説明
② コンパクトな説明
③ ぶれない説明
話し合いでの解決について事前に検討することは?
労働審判では,第1回目から話し合いでの解決が模索されます。従って,事前に,妥協せずに正式裁判で争うのか,それとも話し合いで早期解決を図るのか,について協議しておく必要があります。
話し合いでの解決に際して検討するポイントは?
① 裁判まで争って,勝てるのか?
② 解決金の水準として,どの程度の金額が妥当か?
労働審判委員会が調停案(話し合い解決案)を出す場合のポイントは?
① 労働審判委員会の法的な見解の妥当性
② 解決案(特に解決金の水準)についての妥当性
労働審判委員会の調停案を断るとどうなりますか?
調停案とほぼ同内容の労働審判がなされます。
労働審判がなされると争えないのですか?
2週間以内に異議を出すことが出来ます。それにより労働審判の効力はなくなり,訴訟に移行します。
会社側では弁護士を雇わないとまずいですか?
上記のとおりスピーディかつ適切な対応をしなければなりません。労働審判に強い弁護士を選任することは不可欠であると思います。
社労士に任せることができませんか?
社労士は労働審判の代理権限がありませんので,代理人として労働審判に立ち会うことはできません。顧問社労士の立場で労働審判の場に居ることが許可されることもありますが,労働者側より異議が出されれば,労働審判に参加することはできません。専門家なしで闘うのは非常にリスクがあります。
司法書士に頼むことができませんか?
司法書士も労働審判の代理権限がありませんので,社労士同様,専門家抜きで対応するリスクを負います。
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