解雇予告手当(20条),休業手当(26条)の具体的な計算方法、確認資料
1 平均賃金の計算方法(基本)
平均賃金の計算方法の原則的な形は以下のとおりとなります(労基法12条)。
① 算定期間の注意点
「算定すべき事由の発生した日以前3カ月間」とされています(12条1項本文)が,賃金締切日がある場合については,直前の賃金締切日が起算日とされています(12条2項)。入社後3ヶ月未満であっても,直前の賃金締切日から起算します。
② 「貸金の総額」の注意点
・ 基本給のみならず,家族手当,通勤手当,残業代も含まれます。
・ 以下の3つは算入されません(12条4項)。
① 臨時に支払われた貸金・・・退職金,私傷痛手当,加療見舞金等
② 3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金・・・賞与
③ 通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの
・ 実際に支払済の賃金に限らず,支払われるべきであったが未払いとなっている賃金(例えば,遅配している賃金)も含まれます。
③ 総日数は歴日数を意味し,休日や欠勤日も含まれます。
・ 業務災害による休業,産前産後休業,会社都合の休業,育児・介護休業は賃金総額,歴日数から除く
・ 試用期間は賃金総額,歴日数から除く(ただし,試用期間中に平均賃金を算定する事由が生じた場合は算入する)
・ 入社後3ヶ月に満たない場合は,入社後の期間で計算する
※上記計算の結果,銭未満の端数が生じた場合,これを切り捨てることは可能です(昭22.11.5基発232号)。
2 解雇予告手当の計算例
上記計算例を前提に具体的に検討してみましょう。
例① 6月10日付で即日解雇を行った場合
平均賃金事由である即日解雇日は6月10日ですが、賃金の締め日が毎月20日なので、直前の締め日である5月20日が起算日になります。そこから3ヶ月なので上記計算例のとおりとなります。
解雇予告手当=平均賃金11,123円59銭×30日=333,807.7円≒333,808円
例② 6月10日付解雇を5月31日に予告した場合(10日間の予告がある場合)
この場合も平均賃金事由の発生日は6月10日ですので、例①と同様に上記計算例のとおりとなります。
解雇予告手当=平均賃金11,123円59銭×20日=222,471.8円≒222,472円
解雇予告手当について詳細は
3 休業手当の計算
例 6月11日から6月15日までの5日間,会社の都合により休業させた場合
平均賃金事由である休業手当の発生は6月11日から15日ですが、賃金の締め日が毎月20日なので、直前の締め日である5月20日が起算日になります。そこから3ヶ月なので上記計算例のとおりとなります。
休業手当=平均賃金11,123円59銭×0.6×5日=33,371円
※賃金の端数処理
1円未満の端数が生じた場合,50銭未満の端数は切り捨て,50銭以上を1円に切り上げる(昭和63.3.14基発150号)。
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4 最低保障
賃金の一部又は全部が日給制,時間給制又は出来高払制の場合は,平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前の3ヶ月間にその労働者に対して支払われた当該賃金の総額を,その期間の「労働日数」で除した金額の60%が最低保障となります。
上記1の平均賃金の原則により計算した金額を最低保障が上回る場合は,最低補償金額が平均賃金となります。
対応方法
1 事実関係及び証拠の確認
まずは,以下の事実及び証拠を確認する必要があります。
勤務日数
【証拠】
□ 出勤簿
□ シフト表
賃金支払状況
【証拠】
□ 賃金台帳
□ 給与明細控え
事由の確認
【証拠】
□ 解雇(予告)通知書
□ 休業通知
2 解雇予告手当等の計算及び支払い
解雇予告手当や休業手当等を計算の上,支払いを行います。