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地震や台風により休業とする場合は必ず休業手当を支払う必要があるか?

ご質問

今年(2018年)も大型台風が日本各地を襲いました。当社も台風に伴う集中豪雨により会社施設に支障が生じたり,公共交通機関が運休となる為,休業としました。このように台風で会社が休業となる場合,会社は社員に必ず休業手当を支払わなければならないのでしょうか?

回答

台風に伴う暴風雨や災害によって,会社の事業場の施設・設備が直接的な被害を受けた等に理由で不可抗力により休業せざるを得ない場合は,賃金はもちろん,労基法26条の休業手当支払う必要はありません
これに対し,不可抗力な事情が無いものの会社の判断で休業とする場合は,労基法26条の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要があります。接客業などの場合で台風により客足が遠のき大幅に売上が減少することが見込まれる為,会社の判断で休業とする場合などは,さらに賃金100%を支払わなければならない場合があります。

  • 地震や台風により不可抗力な事情が無い場合は,労基法26条の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要がある。
  • 労働者が休業した場合であっても、それが会社に原因がある場合は、民法536条2項により賃金は原則として100%発生する。
  • 地震や台風により不可抗力により休業する場合以外は,会社の判断による休業をしなければ,休業手当や賃金を支払う必要はない

解説

1 地震・台風などの天災で社員が休業した場合も原則は無給

台風で公共交通機関が運休となる等の理由で社員が会社に出社して勤務をしない場合,ノーワークノーペイの原則により賃金は発生しません。つまり,休んだ日(時間)分の給料は支払わなくてよいのが原則となります。

しかし、以下の場合には賃金や休業手当の支払いが必要となります。

 

2 休業手当(労基法26条)

  

 

2.1 休業手当の発生要件

労基法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めており,休業手当を支払う必要があります。

そして,休業手当の発生要件は

① 使用者の責めに帰すべき事由により

② 休業したこと

です。

これに該当する場合は、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。

 

2.2 ①使用者の責めに帰すべき事由とは?

使用者の責めに帰すべき事由とは,

(1)使用者の故意,過失又は信義則上これと同視すべきものよりも広く,
(2)不可抗力によるものは含まれない,

と解されています(厚生労働省労働基準局編「平成22年版・労働基準法(上)」367頁)。

そして,不可効力とは,

A その原因が事業の外部より発生した事故であること
B 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

との2つの要件を備えたものでなければならないと解されています(同書369頁)。

 

2.3 不可抗力と認められる具体例

地震や台風に伴う災害によって,会社の事業場の施設・設備が直接的な被害を受け社員を休業させる場合

地震や台風に伴う災害によって,事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となった場合

地震や台風に伴う災害によって,停電で業務を行うことが出来ない場合

などです。

これに対して,上記のように地震や台風などによる不可抗力な事情は発生していないが,会社の判断で休業を命じた場合は,「使用者の責に帰すべき事由」が認められるので休業手当が発生します。

この場合は,賃金や休業手当の支払いは不要です。

 

2.4 休業手当を支払わない場合の罰則

要件を満たすにもかかわらず、休業手当を支払わない場合は、労働基準監督官の指導の対象となり,30万円以下の罰金を科せられます(労基法120条1号)。

 

3 賃金請求権が発生する場合(民法536条2項

 

3.1 休業した場合でも賃金が発生する場合とは?

労働者が休業した場合であっても、それが会社に原因がある場合は、民法536条2項により賃金は原則として100%発生します。

というのも,民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」にも該当する為,労働者の賃金債権はなおも発生することになるからです。

 

3.2 「債権者の責めに帰すべき事由」にも該当する場合とは?

① 前記2.3のように地震や台風などにより不可抗力な事情は発生していないものの,会社の判断で休業を命じた場合

② 同様に不可抗力な事情が無いが,接客業などの場合に,地震や台風により客足が遠のき大幅に売上が減少することが見込まれる為,会社の判断で休業とする場合

これらの場合,賃金は原則として賃金の100%を支払う必要があります。

 

3.3民法536条2項の適用を排除することが出来る

なお,民法536条2項は民法の任意規定ですので,労使間の合意により適用を排除することが可能です。

具体的には,就業規則などで「会社の責めに帰すべき事由により従業員を休業させた場合の賃金の額は民法536条2項の適用を排除して平均賃金の100分の60とする」といった定めを置くことで適用を排除できます。

 

3.4 労基法26条と民法536条2項の競合

前記3.2①の場合など,地震や台風などによる不可抗力な事情は発生していないものの会社の判断で休業を命じた場合は,「使用者の責に帰すべき事由」(労基法26条)及び「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)の両方が認められます。

この場合は,民法536条2項に基づいて100%の賃金を支払う必要があります。

労基法26条は,民法536条2項の適用を排除するものではなく,休業手当請求権(労基法26条に基づく請求権)と賃金請求権(民法536条2項に基づく請求権)は競合しうるからです(同旨 最高裁第2小法廷昭62.7.17判決 労働判例499号6頁)。

 

4 就業規則等で不可抗力の場合も含めて休業手当を支払う定めがある場合

 

労働契約や労働協約、就業規則に基づき、使用者の責に帰すべき休業のみならず、天災地変等の不可抗力による休業についても,休業中の時間についての賃金・手当等を支払うとの定めがあることとしている企業の場合は,その定めに従って賃金・手当の支払いが必要となります。

 

5 実務的な対応

 

以上を踏まえ,ありえる企業の実務上の対応の選択肢は次のとおりです。

 

5.1休業手当をなるべく支払わない方法

(1) まず,地震や台風により不可抗力により休業する場合以外は,会社の判断による休業はしません。

これによって,地震や台風により不可抗力な状況ではなく労働者が休業した場合に,休業手当や賃金は発生しません。

(2) 労働者には以下の事項を速やかに通達します。

① 会社は休業しないが,各自の判断で安全に配慮して出社の有無や出社の方法を判断すること

② 欠勤した場合は,無給であること

③ 台風に伴う交通事情等により欠勤したとしても,懲戒等人事上のペナルティー(欠勤控除は除く)はないこと

④ 有給休暇を消化は自由であること

こうすることで,休業に伴う会社のコストを最小化し,出社の伴う安全性に一定の配慮しつつ,台風でも出社する社員と欠勤する社員の不公平感を無くすことが出来ます。

 

5.2 労働者に手厚い保護をする場合

(1) 地震や台風により休業が不可抗力な状況となる場合はもちろん,それ以外の場合も会社の判断で休業にします。

(2) この場合,上記4のとおり就業規則等で休業中の期間の賃金や手当を保障します。

こうすることで,社員は台風による出社の危険に晒されず,出社の判断に迷うこともなく,経済的にも手当が保障され安心して休業することが可能です。

社員にとっては最も理想的な対応方法といえます。

ただ,このような選択肢を採用することが出来るのは一部の大企業や経済的なゆとりのある企業に限られるでしょう。また,全ての企業,特に中小企業でこのような制度をとらなければならない訳ではありません。上記4.1の方法も法的には採ることが可能ですので,企業の実情に応じて経営者にて判断をしてください。

 

5.3 法的に誤った対応

(1) まず,地震や台風により休業が不可抗力な状況では無いが,会社の判断による休業をした場合であっても,無給とすること

この場合,最低でも労基法26条の休業手当の支払いは必要となりますので,法律違反となります。

(2) また,地震や台風により休業が不可抗力な状況では無いが,会社の判断による休業をした場合であっても,労働者には会社の判断で一方的に有給を消化させること

労基法26条の休業手当の支払いは必要となるのに,一方的に有給を消化させることは,労基法26条違反となります。

 

6 参考記事

>>10分で理解!台風で会社を休業とする場合でも休業手当を払わない方法

 

対応方法

1 事実関係及び証拠の確認

まずは,以下の事実及び証拠を確認する必要があります。

不可抗力な事情の有無

【証拠】
□ 地震や台風に関する報道記事
□ 罹災証明書
□ 休業に関する報告書

休業に関する社員への通達

【証拠】
□ 休業に関する文書
□ メール

休業の実績

【証拠】
□ 出勤簿
□ タイムカード・シフト表

休業に関する労働条件

【証拠】
□ 就業規則,雇用契約書

 

2 労働者との交渉

労働者が休業手当や賃金を請求してきた場合,まずは,法的措置に進む前に,トラブルになっている労働者と交渉して解決を図ります。具体的には,就業規則等の明確な根拠をもって説明することが必要となります。

 

3 法的措置の裁判対応

労働者との間で交渉による解決が図れない場合は,労働者は自己の権利の実現を求めて労働組合へ加入したり,裁判を起こす場合があります。貴社としては,かかる労働者の法的請求に適切に対応する必要があります。

 

労働問題.comの対応

1 経験豊富な弁護士に相談

休業させる場合の問題は適用される法律が難解で事実関係が極めて複雑であり,また,貴社が採るべき対応策はケースバイケースで決めざるを得ません。貴社独自で調査の上でのご対応が,時に誤った方法であることも多分にございます。
そこで,まず,労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士にご相談下さい。ご相談が早ければ早いほどとりうる手段は多いのが実際ですので,トラブルが少しでも生じましたら出来るだけ早期にご相談されることをお勧めいたします。
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2 継続的なご相談・コンサルティング

労使間のトラブルは一時的なものではなく,長期化することがしばしばあります。ケースバイケースに採るべき対応策や確保すべき証拠も異なりますし,時々刻々と状況が変わっていき,その都度適切な対応をとることが必要です。この対応が間違っていた為に,その後の交渉や法的措置の段階で不利な状況に立たされることもままあります。
労働問題.COMでは,経験豊富な弁護士が,継続的なご相談を受けコンサルティングを行います。初期の段階より貴社にとって有利な対応をアドバイスしていきます。それにより,その後の交渉・法的措置にとって有利な証拠を確保でき,適切な対応をとることで,万全の準備が出来ます。また,継続的に相談が出来ることにより安心して他の日常業務に専念していただくことができます。

3 貴社を代理して労働者(弁護士,労働組合)と交渉いたします。

労働者の対応は様々ですが,貴社へ要求を認めさせるために,様々な働きかけをする事が多いのが実情です。労働者が弁護士や労働組合を介して,会社に対し各種の請求を行い,交渉を求めることはよくあることです。弁護士や労働組合はこの種事案の交渉のプロですので,貴社独自で臨むことで,あらぬ言質や証拠をとられ,本来了承する必要のない要求まで認めさせられることもしばしばです。貴社独自でのご対応は,一般的には困難であることが多いといえます。
そこで,労働問題.COMでは,労使間の交渉対応に精通した弁護士が,貴社に代わって交渉の対応を致します。具体的には,貴社担当者から詳細なヒアリングを実施し,証拠の収集等の準備を行った上で,弁護士が法的根拠に基づいた通知書を出し,適切に交渉することで,貴社にとって有利な結論を,裁判を経ずに勝ち取ることも可能となります。

4 裁判対応

労働者が労働審判,仮処分,訴訟などの裁判を起こしてくる場合が近時急増しています。かかる裁判への対応は法律で訴訟代理権を独占する弁護士のみが対応することができます。
但し,労働問題を適切に対応することができるのは労働問題について豊富な経験実績を有する弁護士に他なりませんが,労働問題は極めて特殊専門領域であるため,経験実績がない又は乏しい弁護士が殆どである実情があります。
労働問題.COMでは,労働事件を専門分野とし,裁判対応の豊富な経験実績を有する弁護士が常時対応させていただいております。貴社に対し,最善の弁護活動をお約束いたします。

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