ユニオン・ショップ解雇ができる?

  • 2020年8月8日
  • 2022年6月13日
  • 解雇
社長
当社は、貨物輸送を業とする株式会社ですが、Z組合と管理職等の一定範囲の従業員をお除く者はZ組合員とするとの、いわゆるユニオン・ショップ協定を締結しています。同協定中には、「会社は、Z組合を脱退しまたは除名された者を解雇する。」との規定が存します。
この度、当社の従業員Yが組合費を着服・横領した疑いがあるとして、Z組合から除名されました。また、当社としても組合とは別に上記着服・横領を調査したところ、極めて疑わしい状況が存することを確認しました。
そこで、当社は、Yを上記ユニオン・ショップ協定に基づいて、解雇致しました。
しかし、Yは、上記着服・横領をあくまでも行っていないと主張し、上記解雇を争う姿勢を有しております。当社としては、ユニオン・ショップ協定に基づいて解雇しているので有効であると考えておりますが、法的にはいかがでしょうか?
弁護士吉村雄二郎
貴社はYが上記着服・横領に関与したことを理由にZ組合から除名処分されているため,ユニオン・ショップ協定所定の解雇要件を充たすとお考えのようです。
しかしながら,労働組合の除名処分が無効な場合は,使用者にユニオン・ショップ協定上の解雇義務は発生しないので,無効な除名をされた者に対するユニオン・ショップ解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当なものとは言えないとして無効となることは確定した裁判例の示すとおりです(日本食塩製造事件最高裁二小判昭50・4・25)。
この点,前記のとおりYが上記着服・横領に関与した事実は単に疑いがあると言えるに過ぎず、客観的資料に基づいて確実に事実が存するとは言いがたいのが現状です。したたって、Z組合の除名処分も無効となる可能性が高いと言わざるを得ません。
よって、本件のユニオン・ショップ協定に基づく解雇も無効となる可能性が高いと考えます。
労働組合の除名処分が無効な場合は,ユニオン・ショップ解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当なものとは言えないとして無効となる。
会社としては、ユ・シ解雇の前に、組合の処分の適否を慎重に確認する必要がある。

ユニオンショップとは

 

参考裁判例

ユ・シ解雇が無効と判断された事例

日本食塩製造事件

最判昭和50年4月25日労働判例227号32頁

〈事案の概要〉
YとA労働組合A支部(以下「A組合」)との間では,新機械の導入に関する事前協議を巡り昭和38年1月中旬ころから対立が生じていたところ,A組合執行委員であったⅩらが,ピケによりY役員の入門を阻止した。そこでYは,Ⅹらが職場規律を乱したものとして,同年7月29日,Ⅹを懲戒解雇とするとともに,他の組合員らに対し出勤停止,減給,遥責等の処分を行った。これに対しA組合は,Yの上記処分を不当労働行為として,同年10月30日,神奈川県地方労働委員会へ救済を申し立てたところ,昭和40年8月2日,同委員会においてYとAとの間でⅩへの懲戒解雇や他の組合員への懲戒処分を撤回するとともに,Ⅹの退職を内容とする和解が成立した。ところがⅩは,上記和解に従わず退職を拒否したことから,8月21日,A組合はⅩを離籍(除名)処分とし,同日Yにその旨を通知した。そこでYは,A組合とのユニオンショップ協定に基づきⅩを解雇した。これに対し,XはA組合の除名及びYの解雇の無効を主張して提訴した。

〈判断のポイント〉
「思うに,使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になると解するのが相当である。…労働組合から除名された労働者に対しユニオン・ショップ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は,ユニオン・ショップ協定によって使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり,客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり,右除名が無効な場合には,前記のように使用者に解雇義務が生じないから,かかる場合には,客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず,他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり,解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。
本件についてこれをみるに,…離籍(除名)の効力いかんによっては,本件解雇を無効と判断すべき場合があるものといわなければならない。しかるに,Ⅹが,本件離籍は無効であり,したがって右ユニオン・ショップ条項に基づいてした解雇は無効であると主張したのに対し,原審が,本件離籍(除名)の効力について審理判断することなく,除名の有効無効はユニオン・ショップ協定に基づく解雇の効力になんら影響を及ぼすものではないとして,Ⅹの主張を排斥したのは,ユニオン・ショップ協定に基づく解雇の法理の解釈を誤り,そのため審理不尽におちいり,ひいては理由不備の違法をおかしたものというべきである。したがって,論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。」

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