当社の従業員にメンタルヘルスの不調が疑われ,欠勤を繰り返している者がいます。当該従業員から休職の申出はありませんが,当社としては,業務にも支障が出ており,当該従業員に治療に専念してもらうためにも休職させたいと考えています。休職を命じることは可能でしょうか?
就業規則等で「会社が,労働者の心身の状況により勤務が不適当と認めた場合には,休職を命じることがある」等の定めがあり,当該従業員の欠勤理由がメンタルヘルス不調によるものと特定でき,かつ休職を命じることに合理的な理由がある場合には休職を命じることができます。また,この際に従業員の欠勤理由がメンタルヘルス不調によるものと特定するには医師の診断が必要ですが,医師へ受診させることに合理性・相当性がある場合には,安全配慮義務の観点から受診を命じることは可能だと言えます。
精神障害の従業員を休職させるための規定を設けること
医師への受診も命ずることが出来るようにしておく
医師への受診も命ずることが出来るようにしておく
1 精神障害は休職事由に該当するか?
精神障害による不完全な労務提供がある場合に問題となる。
しかし,労働者の態様によっては,他の従業員に迷惑をかける等業務上の支障が生ずるので,休職事由にも該当しえる。
2 精神障害の従業員を休職させるための規定とは?
①精神の障害により労務提供が不完全なときは休職を命ずることがある。
②業務上の必要性に基づいて休職を命じることがある。
という休職規定を設ける必要がある。
3 精神障害についての診断書の評価と専門医の必要性
主治医によって書かれた診断書を鵜呑みにせずに,的確に判断できるよう,指定医とくに産業医などを充実させる必要がある。
4 実務では合意のうえで休職させる
若い従業員の場合は,両親と身元保証人,そして主治医を加えて話し合いを行い,合意の上で休職させるべき。
5 精神障害は休職期間満了までの治癒が難しい
精神の障害の従業員については「治癒」の認定を厳しく行い,完全に治癒していなければ,就業規則に従って労働契約を解消すべき。
6 できる限り円満退職の実現を図る
合意の上で退職してもらうか,退職上積金を出して会社都合退職という方向で話し合う。
その話し合いは,休職期間満了の1~2週間前に行う。
本人や家族が会社の提案を拒否する場合は,「治癒の有無について争うなら裁判になりますが,合意退職されるのであれば,今後の治療費も考えたうえで,上積み金を支払います。」と提示すべき。
※ 休職をさせるかどうかの話し合いの際は,決して会社の方から退職の話をすべきではない。
7 健康に関するプライバシーは取得後の管理の問題
使用者が労働者の健康情報にアクセスするのは当然。