新規派遣許可申請の許可要件チェック項目について説明します。
労働者派遣事業の許可を受けるためには、禁鋼刑または一定の労働法違反で罰金刑以上に処せられてから5年を経過していない等の欠格事由に該当しないことに加え、次の許可基準(概要)を満たす必要があります。
- 財政的基礎の要件
- 事業所の要件
- キャリア形成支援制度の要件
- 派遣元責任者の要件
- 労働保険・社会保険への加入の要件
- 個人情報に関する措置の要件
- 「専ら派遣」が目的でないこと
- 就業規則・労働契約の記載事項に関する要件
- 適正な事業運営に関する要件
- 教育訓練(キャリア形成支援制度に関するものを除く)に関する要件
- 組織的基礎に関する要件
- 教育訓練中の交通費と個人情報の管理
まずは、許可申請の提出書類である様式第15号「労働者派遣事業の許可申請にあたっての自己チェックの結果について」(自己チェックシート) をチェックしてみましょう。
(1) 財産的基礎の要件
まず財産的基礎の要件を満たしていなければ申請は断念せざるを得ません。
直近の決算において、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
具体的には、直近の決算の決算報告害(貸借対照表)の内容を確認しながら、以下のようなチェック項目に当てはめてチェックしましょう。
基準資産額
直近の事業年度における決算報告書(貸借対照表)を確認
資産額合計…① | |
繰延資産・営業件合計額…② | |
差引試算の総額(= ① - ②)… ③ | |
負債の総額…④ | |
基準資産額(=③ - ④)…⑤ |
要件check
- 基準資産額 ≧ 2,000万円 × 事業所数
- 基準資産額 ≧ 負債の総額 × 1/7
- 自己名義の現金・預金の額 ≧ 1 ,500万円 × 事業所数
(2)事業所の要件
派遣事業所として使用するために、適切な事業所として、法で規制する風俗営業が密集する等事業運営に好ましくない位置にないこと、事務所の床面積が概ね20㎡以上あることが求められます。
個人情報を保管しておくための鍵付きの棚なども確保しておく必要があります。
(3) キャリア形成支援制度の要件
派遣事業者は派遣労働者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして、派遣労働者のキャリア形成支援制度を有することが許可基準となっています。
派遣元事業主は労働者のキャリア形成を行うために、次の①~④を満たすキャリア形成支援制度を有しなければなりません。
① 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること。その訓練計画は下記の要件をすべて満たしていること。
- すべての派遣労働者を対象としたものであること。
- 有給かつ無償で行われるものであること。※取扱いの記載された就業規則または労働契約の該当箇所の写しを提出
- 派遣労働者のキヤリアアップに資する内容となっていること。
- 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれていること。
- 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容のものであること。
②キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置しており、雇用するすべての派遣労働者が利用できること。
③キャリア形成を念頭に置いた派遣先提供のための事務手引、マニュアル等が整備されていること。
④教育訓練の時期や一定の期間ごとに一定の時間教育訓練が用意されていること。
※ 現時点でなくても問題ありません。申請準備中に整備します。
(4) 派遣元責任者の要件
雇用する労働者または役員で、成年に達した後、3年以上の雇用管理経験があり、派遣元責任者講習を3年以内に受けているといった要件を満たす派遣元責任者が、派遣労働者100人に対し1人以上、適正に選任されている必要があります。
派遣元責任者講習については、いろいろな団体が行っていますが、思った日程で受講できない場合もありますので、時間に余裕を持って受講しておきましょ
う。また、派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者をあらかじめ選任しておかなければなりません。
派遣元責任者と職務代行者はいずれも事業所に常勤する者である必要があるため、複数の法人の役員や複数の事業所の業務を兼業することはできません。
必要な要件を満たせば、事業主(代表者)が自ら派遣元責任者になることはできますが、他社の役員や社員を兼務している場合は、常勤とはいえませんので認められません。
新たに起業して許可を取得する場合でも、特定労働者派遣事業所が許可申請を行う場合でも、派遣元責任者と職務代行者の2名の常勤者が最低限必要となりますので、注意してください。
※ オンライン受講可能 1人9000円程度の費用 一般社団法人日本人材派遣協会 派遣元責任者講習
(5) 労働保険・社会保険への加入の要件
加入要件を満たしている労働者が、すべて適正に労働保険・社会保険に加入していなければなりません。
加入していない労働者については、「雇用保険等の被保険者資格取得の状況報告書」にて氏名、未加入の具体的な理由を報告します。
(6) 個人情報に関する措置の要件
派遣労働者(登録者を含む)の個人情報を適正に管理するための措置が講じられ、次に掲げる事項を含む個人情報適正管理規程が定められている必要があります。
- 個人情報を取り扱うことができる者の範囲に関する事項
- 個人情報を取り扱う者に対する研修等教育訓練に関する事項
- 本人から求められた場合の個人情報の開示または訂正(削除を含む)の取扱いに関する事項
- 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する事項
(7) 「専ら派遣」が目的でないこと
特定の会社のみに労働者を派遣する、いわゆる「専ら派遣」は派遣法で禁止されています。
よって、「専ら派遣」を行うことを目的として労働者派遣の許可を受けることはできません。
※ 当初派遣先が1社であっても問題ありません。
(8) 就業規則・労働契約の記載事項に関する要件
労働者の福祉の増進を図ることが見込まれる等、適正な雇用管理が期待できるものとして、次の事項を就業規則または労働契約等に記載しておかなければなりません。
①無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
※取扱いの記載された就業規則または労働契約の該当箇所の写しを提出
②無期雇用派遣労働者、または有期雇用派遣であるが雇用契約期間内に派遣契約が終了した者について、次の派遣先が見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法第26条に基づく手当(休業手当)を支払う旨の規定があること。
※取扱いの記載された就業規則または労働契約の該当箇所の写しを提出
※ 準備中に就業規則を改定又は新規作成します
(9)適正な事業運営に関する要件
適正な事業運営に関する判断として、労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として使用しないこと、登録制度を採用している場合において、登録に際し、いかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収しないこと、派遣先における団体交渉または労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務について労働者派遣を行おうとするものではないこと等が求められます。
(10)教育訓練(キャリア形成支援制度に関するものを除く)に関する要件
派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして、派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務づけられている安全衛生教育の実施体制を整備している必要があります。
(11) 組織的基礎に関する要件
労働者派遣事業に係る指揮命令の系統が明確である必要があります。
(12) 教育訓練中の交通費と個人情報の管理
派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費について、派遣先に通勤する際の交通費よりも高くなる場合には、その差額を派遣元が負担しなければなりません。
また、職業紹介事業と兼業する場合の個人情報の管理については、別個の管理を要しません。ただし、派遣事業で得た個人情報の職業紹介事業での使用は禁止されます。