労働者からの残業代の支払を求める労働審判や訴訟において,労働者が残業代支払請求を放棄しているとの反論ができると聞きました。具体的にはどのような場合に出来るのでしょうか?
残業代請求権が発生していても,労働者が残業代請求権を放棄している場合には,発生した残業代請求権は消滅することになります。賃金・退職金の放棄の意思表示については,労働基準法24条1項の「賃金全額弘の原則」の趣旨から,その「効力を肯定するには,…自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない」とされ,具体的には諸事情に照らし「右意思表示が…自由な意思表示に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していた」場合に効力が認められるとされています(シンガー・ソーイング・メシーン事件・最判昭48.1.19判時695.107)。従って,残業代請求権を放棄するだけの合理的な理由が必要となります。
残業代請求件の放棄は可能であり,退職時に,「残業代請求件等一切を放棄する」旨の書面を取り付けておくことも一案
もっとも,放棄書面を取り付けても,合理的な理由がなければ後で無効となされることがある。
もっとも,放棄書面を取り付けても,合理的な理由がなければ後で無効となされることがある。