賃金規程の定め方と賞与の支払い義務

社長
我が社の給与規程には,「会社は業績に応じて賞与を支給する」との定めがあり,これまで,ときに変動はありましたが,毎年2回,夏は給料の2カ月分前後,冬は給料の3カ月分前後を賞与として支払ってきました。ところが,当社は,円高の影響を受け急速に業績が悪化しているため,今年の冬の賞与が支給できないかもしれません。住宅ローンの支払いを抱えている従業員もいますので,賞与不支給となると従業員からかなりの反発を受けると予想されます。賞与不支給として,後々紛争となった場合,この不支給は法律違反となるのでしょうか。
弁護士吉村雄二郎
賞与は,労基法上の「賃金」の一種であることは言うまでもありませんが(11条),賞与自体の支給が法律上義務づけられているというものではありません。賞与を請求し得るかどうかは,第一次的には労働契約の内容によって決まるものです。例えば,就業規則において「賞与は年2回支給する」と規定していた場合,使用者には賞与の支給義務がありますが,「賞与は会社の業績に応じて年2回支給する」と規定していた場合,賞与が支給されるかどうかは,会社の業績にかかっているのであって,常に使用者に賞与の支給義務があるわけではありません。
次に,ある事実が反復・継続され,労使双方が規範意識をもつにいたっているような事実の蓄積については,労働慣行として労使双方を拘束するということがありますので,過去の賞与支給実績が賞与の支給義務の有無に影響を与えることはないのかという点が問題となります。一般的には過去に支給されてきたというだけでは賞与についての具体的請求権が発生するとまでは言い難いでしょう。とくに,ご質問の給与規程の定めを前提とするかぎり,今期の会社の業績が過去に経験したことのないほど悪化しているという場合には,今期については不支給となってもやむを得ないと判断される可能性が高いと思われます。

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