行政通達

労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について〔労働基準法〕 (令和5年3月30日) (基発0330第1号)

労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について〔労働基準法〕

(令和5年3月30日)

(基発0330第1号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

[10年保存]

「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年厚生労働省令第39号)、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件」(令和5年厚生労働省告示第114号)及び「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示」(令和5年厚生労働省告示第115号)が本日公布・告示されたところであるが、その主たる内容は下記のとおりであるので、貴職におかれては、その円滑な施行に万全を期すため、所要の準備に努められたい。

なお、改正後の省令等の具体的な取扱い等については、別途通知する。

第1 労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令

1 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「則」という。)の一部改正

(1) 労働条件明示事項の追加(則第5条関係)

ア 労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第15条第1項前段の規定に基づいて明示しなければならない労働条件に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を追加したこと。

イ その契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の場合においては、使用者は、則第5条第1項に規定するもののほか、無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件を明示しなければならないものとしたこと。ただし、無期転換後の労働条件のうち同項第4号の2から第11号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでないものとしたこと。

ウ その契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の場合においては、使用者は、則第5条第3項に規定するもののほか、無期転換申込みに関する事項並びに無期転換後の労働条件のうち同条第1項第1号及び第1号の3から第4号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)を書面の交付等の方法により明示しなければならないものとしたこと。

(2) 専門業務型裁量労働制の協定事項(則第24条の2の2及び第71条関係)

専門業務型裁量労働制の協定事項に、次に掲げるものを追加するものとしたこと。

ア 使用者は、法第38条の3第1項の規定により労働者を同項第1号に掲げる業務に就かせたときは同項第2号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

イ アの同意の撤回に関する手続

ウ アの同意及びその撤回に関する労働者ごとの記録を協定の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること。

(3) 専門業務型裁量労働制の記録の保存(則第24条の2の2の2及び第71条関係)

使用者は、則において協定でその記録を保存することとされた事項に関する労働者ごとの記録を作成し、協定の有効期間中及びその満了後3年間保存しなければならないものとしたこと。

(4) 企画業務型裁量労働制の決議事項(則第24条の2の3及び第71条関係)

企画業務型裁量労働制の決議事項に、次に掲げるものを追加するものとしたこと。

ア 法第38条の4第1項第1号に掲げる業務に従事する同項第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(第1の1の(4)のイ及び(6)のイの(ア)並びに第3において「対象労働者」という。)の同項第6号の同意の撤回に関する手続

イ 使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合にあっては、労使委員会に対し、当該変更の内容について説明を行うこと。

ウ アの同意の撤回に関する労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその満了後3年間保存しなければならないものとすること。

(5) 企画業務型裁量労働制の記録の保存(則第24条の2の3の2及び第71条関係)

使用者は、則において労使委員会の決議でその記録を保存することとされた事項に関する労働者ごとの記録を作成し、決議の有効期間中及びその満了後3年間保存しなければならないものとしたこと。

(6) 労使委員会の要件(則第24条の2の4関係)

ア 法第38条の4第2項第1号の規定による労使委員会の労働者側委員の指名は、使用者の意向に基づくものであってはならないものとしたこと。

イ 労使委員会の運営規程に、以下の事項を追加するものとしたこと。

(ア) 対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項

(イ) 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項

(ウ) 開催頻度を6箇月以内ごとに1回とすること。

ウ 使用者は、法第38条の4第2項第1号の規定により指名された労働者側委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないものとしたこと。

(7) 定期報告(則第24条の2の5及び本省令による改正前の則第66条の2関係)

則第66条の2の規定を削除し、定期報告は、決議の有効期間の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回しなければならないものとしたこと。

(8) その他所要の改正を行うものとしたこと。

2 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(平成4年労働省令第26号。以下「設定改善則」という。)の一部改正(設定改善則第3条関係)

使用者は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条の規定により指名された委員が同条の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないものとしたこと。

3 施行期日等(附則第1条から第7条関係)

(1) この省令は、令和6年4月1日から施行するものとしたこと。

(2) この省令の施行に関し必要な経過措置を定めるものとしたこと。

第2 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件

1 更新上限を定める場合等の理由の説明(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「雇止めに関する基準」という。)第1条関係)

使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないものとしたこと。

2 無期転換後の労働条件に関する説明(雇止めに関する基準第5条関係)

使用者は、法第15条第1項の規定により、労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするに当たって労働契約法(平成19年法律第128号)第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならないものとしたこと。

3 その他

題名の改正その他所要の規定の整理を行うものとしたこと。

4 適用期日

この告示は、令和6年4月1日から適用するものとしたこと。

第3 労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示

1 労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針(平成11年労働省告示第149号。以下「指針」という。)の一部改正

(1) 対象労働者の要件(指針第3の2及び7関係)

ア 対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が労働者の賃金水準を労使委員会に示すことが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

イ 使用者が、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合は、労使委員会に対し、事前に説明を行うことが適当であることに留意することが必要であるものとしたこと。

(2) 本人同意・同意の撤回(指針第3の6及び7関係)

ア 制度の適用に関する同意に当たっては、使用者は、労働者に対し、制度概要等について明示した上で説明することが適当であるものとしたこと。また、十分な説明がなされなかった等により、同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果は生じないこととなる場合があることに留意することが必要であるものとしたこと。

イ 同意の撤回の手続を決議するに際しては申出先の部署等を明らかにする必要があることや、使用者は同意の撤回を理由として不利益な取扱いをしてはならないものとするとともに、同意の撤回後の処遇等について、委員はあらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

(3) 裁量の確保(指針第3の1関係)

ア 裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを明確化することとしたこと。

イ 使用者及び委員は、労働者の時間配分の決定等に関する裁量が失われたと認められる場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することが必要であるものとしたこと。

(4) 健康・福祉確保措置(指針第3の4関係)

ア 「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の8の3により把握が求められている「労働時間の状況」と同一であることを明確化することとしたこと。

イ 健康・福祉確保措置として定めることが適切な内容として、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導を追加し、決議するものとしたこと。

ウ 委員は、指針に規定されている健康・福祉確保措置を決議するに当たっては、「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから一つずつ以上を実施することが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

注① 「事業場における制度的な措置」は、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)及び年次有給休暇の取得促進をいう。

注② 「個々の対象労働者に対する措置」は、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導、代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、心とからだの健康問題についての相談窓口設置、適切な部署への配置転換及び産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせることをいう。

エ 使用者及び委員は、健康・福祉確保措置として、対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)を決議することが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

オ 委員は、健康・福祉確保措置の結果を踏まえ、特定の対象労働者に制度を適用しないこととする場合における配置及び処遇又はその決定方法について、あらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

(5) みなし労働時間の設定と処遇の確保(指針第3の3関係)

みなし労働時間について決議するに当たっては、委員は、対象業務の内容、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準とし、相応の処遇を確保する必要があるものとしたこと。

(6) 労使委員会の実効性向上(指針第3の7及び第4の1から5関係)

ア 委員は、委員の半数以上からの申出があった場合に限らず、制度の実施状況等について定期的に調査審議するために必要がある場合には、労使委員会を開催する必要があることに留意することが必要であるものとしたこと。

イ 労使委員会に求められる役割として、労使委員会には、決議の内容が指針の内容に適合するようにするとともに、決議の有効期間中も、定期的に制度の実施状況に関する情報を把握し、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを調査審議し、必要に応じて、運用の改善を図ることや決議の内容について見直しを行うことが求められるものとしたこと。また、委員は、労使委員会がこうした役割を担うことに留意することが必要であるものとしたこと。

ウ 使用者は、過半数代表者が必要な手続を円滑に実施できるよう十分に話し合い、必要な配慮を行うことが適当であるものとしたこと。

エ 過半数代表者が適正に選出されていない場合等には、労使委員会による決議は無効になること及び労使を代表する委員それぞれ1名計2名で構成される委員会は労使委員会として認められないものとしたこと。

オ 使用者及び委員は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、使用者からの説明は、決議に先立って行う必要があることに留意することが必要であるものとしたこと。

カ 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを労使委員会で調査審議し、運用の改善を図ることや決議の内容について必要な見直しを行うことが必要であること等を踏まえ、使用者及び委員は、制度の実施状況の把握の頻度や方法を運営規程に定める必要があることに留意することが必要であるものとしたこと。

キ 委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況を開示することが適当であることに留意することが必要であるものとしたこと。

(7) 苦情処理措置(指針第3の5及び6関係)

ア 使用者及び委員は、労使委員会に苦情の申出の窓口としての役割を担わせる等、委員が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことに留意することが必要であるものとしたこと。

イ 苦情処理措置に関して、使用者は、労働者から制度の適用に関する同意を得るに当たって、苦情の申出先や苦情の申出方法等を書面で明示する等、具体的内容を説明することが適当であることに留意することが必要であるものとしたこと。

(8) その他所要の改正を行うものとしたこと。

2 労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(平成9年労働省告示第7号。以下「専門業務告示」という。)の一部改正(専門業務告示第8号関係)

銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務を、専門業務型裁量労働制の対象とするものとしたこと。

3 適用期日

この告示は、令和6年4月1日から適用するものとしたこと。

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