事業所閉鎖_解雇

事業所(支店・工場)の閉鎖を理由に解雇できるか?

社長
当社は全国に5つの事業所を有する中小企業です。事業所Aは,その事業所単体では経営不振に陥り営業損失を出し続けていました。そこで、事業所Aを閉鎖することとしました。閉鎖に伴い事業所Aに勤務する社員は余剰人員となります。事業所Aの社員は閉鎖と同時に解雇しても大丈夫でしょうか?
弁護士吉村雄二郎
事業所Aを閉鎖するかどうかは経営判断として自由に決定・実行できます。もっとも、閉鎖により、事業所Aに勤務している社員の多くは余剰人員になります。しかし、事業所Aの社員の解雇が自由にできるわけではありません。まずは他の事業所への異動などによって雇用を維持することを検討し、あわせて希望退職の募集や退職勧奨による退職を募ります。それでも人員が余剰する場合は整理解雇の要件を検討する必要があります。整理解雇をする場合は、A事業所の社員だけではなく会社全体の社員を対象に整理解雇の人選をしなければなりません。
ただし,①会社の財務状況からA事業所の社員を他の事業所への配置転換させる費用を拠出することが困難である場合や,②A事業所の社員がA事業所という勤務地を限定した雇用契約である場合など,他の事業所へ配置転換が不可能又は困難な場合は,A事業所の社員を優先的に整理対象とすることも許される場合もあります。実務的には、整理解雇の前に整理対象者に対して退職勧奨を行い、退職金の上乗せ等の条件で整理解雇をせずに解決した方がよいでしょう。
事業所の閉鎖は経営判断として会社の裁量で決定できる
事業所を閉鎖する場合は、異動などによって雇用を維持することを検討した上で人員削減の必要がある場合は整理解雇をすることになる
整理解雇の人選は閉鎖する事業所を優先するのではなく、会社全体の人員から選出する必要がある。ただし、閉鎖事業所の社員を異動させる場合にコストが過剰に発生する場合等には閉鎖事業所の社員を優先することも許される場合がある。

整理解雇を行う前に,退職金の上乗せを行うなどして退職勧奨を行う。

1 事業所の閉鎖の決定できる

1.1 事業所の閉鎖は経営者が決められる

まず,事業所を閉鎖するか否かは、企業が本来自由に決定できます。

事業所単体の損益が営業損失(赤字)を出し続けているような場合はもちろん、現時点では営業損失を出していないとしても、将来的な経営方針を踏まえた事業再構築・経営合理化のための閉鎖も認められています

なお、整理解雇を争われた場合は、事業所閉鎖の理由や経緯について、整理解雇の人員削減の必要性の要素に関連して、会社側にて主張及び立証が求められます。

事業所の閉鎖の決定は自由ですが、最終的には整理解雇を行うことを想定して、閉鎖の理由を証拠(財務諸表など)に基づいて合理的に説明できるよう準備しておく必要はあります。

1.2 余剰人員の処遇

事業所が閉鎖されると,その事業所の業務が消滅することになります。当然、その事業所に勤務している社員の多くは仕事がなくなり余剰人員になります。

もっとも,この事業所の余剰人員について、直ちに解雇が自由にできるわけではありません

まずは他の事業所への異動などにより雇用を維持することを検討し、それでも人員が余剰する場合は、希望退職の募集や退職勧奨による退職を募り、最終的には整理解雇の要件を検討する必要があります。

なお、一部の事業所だけではなく、会社全体の事業を廃止し、会社の解散・清算する場合は、整理解雇の法理は適用されません。その場合は別の検討となりますので、下記の記事をご参照ください。

参考記事

会社解散・清算と従業員の解雇

2 配置転換による雇用維持

2.1 事業所閉鎖を理由とした配置転換

事業所を閉鎖する場合、その事業所に勤務する社員を、まずは他の事業所への配置転換(異動)することによって雇用を維持することを検討します。

基本的には、就業規則に「業務上の必要性があるときは配転を命ずることがある」といった一般的な条項があれば、配置転換(転勤)を命ずることが可能です。

また、配転先に同種職種がない場合は、別の職種の業務を命ずることも可能です。事業所閉鎖に伴う雇用維持という業務上の必要性が高いので、比較的広く配置転換を命ずることが可能です。

さらに、配置転換(転勤)だけでは受け皿が足りない場合、他企業への出向グループ会社への転籍によって雇用を維持することも検討します。

異動先は出来るだけ転居を伴わずに異動できる事業所から検討することになりますが、そのような事業所が近くにない場合や人材を必要としている部署が遠方にしかない場合は、転居を伴う異動も命ずることも可能です。

もっとも、特に現地採用した社員の場合は、転居を伴う異動を打診した段階で退職を選択する場合もあります。従って、異動の打診と共に、退職の選択肢も提示した方がよい場合もあります。

2.2 勤務地限定の特約がある社員について

現地採用の労働者のように、雇用契約上、勤務場所が明確に限定されている労働者(勤務地限定社員)がいます。勤務地限定社員を転勤させるには,労働者の個別的同意が必要となり、使用者は一方的に転勤を命ずることはできません

この場合、理論上は、事業所の閉鎖により勤務場所が消滅しますので、配置転換の打診を一切せずに、希望退職・退職勧奨による自主退職か整理解雇をするほかないと思われます。

もっとも、他の事業所に異動すれば雇用を維持できる場合は、その異動の提示をして、異動に応ずるか、それとも希望退職・退職勧奨による自主退職かを労働者に選択させるとよいでしょう。このように雇用維持のために可能な検討を行うプロセスを経ることは、最終的に整理解雇を行う際の有利な事情となります。

3 希望退職の募集・退職勧奨

スケジュール例

会社の業績悪化により、特に業績が悪い地方都市の事業場(工場)を閉鎖することになった場合の参考例です。

日程期間手続
12月~1月2ヶ月専門の弁護士へ依頼し、人員整理全般の依頼をする。財務状況の把握、余剰人員の抽出、企業再建方針について助言を受けながら進める。
2月1ヶ月希望退職募集の条件、スケジュールの確定などの準備期間
3月1日2週間労働組合(執行部)との協議
3月15日~18日3日間
  • 従業員説明会
  • 職業安定所への説明(場合により地方自治体・商工会議所への説明、産業雇用安定センターへの協力要請)、重要取引先への説明
  • マスコミ対応窓口の一本化
3月20日~4月4日約2週間希望退職者募集期間  ※場合により個別面接開始
4月5日~7日3日間従業員説明会(退職勧奨の開始を発表)
4月8日~22日2週間退職勧奨 期間途中に回答日を設定。
4月15日希望退職応募者 退職日
4月15日整理解雇対象者に解雇予告通知
5月15日整理解雇日

3.1 まずは円満な退職を目指す

上記2のように配置転換、職種変更、グループ会社への転籍などによる雇用維持策を講じてもなお余剰人員が残る場合は、退職を検討することになります。

もっとも、いきなり整理解雇を行うのではなく、希望退職の募集や退職勧奨によって、自主退職・合意退職による円満解決の方法を探ることが一般です。

このように円満な雇用終了のために可能な検討を行うプロセスを経ることは、最終的に整理解雇を行う際の有利な事情となります。

 3.2 社員に対する説明

企業として、事業所閉鎖の方針を集団説明会や個別面談で社員に説明します。

実際の閉鎖より2ヶ月~3ヶ月前に従業員に説明することが通常です。

□ 事業所閉鎖の経緯や理由
□ 閉鎖後の従業員の処遇
□ 他の事業所への異動や職種変更の有無
□ 希望退職の募集内容、上乗せ条件の内容
□ 希望退職に応じなかった場合は解雇となること

労働組合がある場合は労組に対しても説明を行います。

弁護士吉村雄二郎
これらの説明は事業所閉鎖の決定後に行いますが、唐突に事業所閉鎖を伝えるのは出来るだけ避けた方がよいでしょう。会社の業績が悪化し将来的に事業所閉鎖の可能性が生じた段階で、その可能性について従業員や労働組合に説明しておくとよいです。そのような対応をすることで、事後的に裁判で争われた際に、会社は社員に情報を共有して丁寧な対応をしたと評価されるからです。

3.3 個別の意向聴取(配置転換が可能な場合)

なお、ある程度の規模のある会社で、一つの事業所の閉鎖した場合であっても、他の事業所へ異動させることが可能な場合は、異動に関する意向聴取をします。

この場合に、実際の閉鎖より3ヶ月~6ヶ月前に従業員に説明し、面談等により意向を確認することが通常です。

面談では、他の営業所への転勤を希望するか、それとも自主退職をするのか等を確認します(この時点では、希望退職募集や退職勧奨はしません。)。

現地採用された社員の場合、勤務地限定の特約をしていなくとも、家庭の事情等で他の事業所への転勤を希望せず、自主退職を希望する者も一定数存在します。

その場合は、退職届を受領すれば足ります。このように異動の選択肢がある場合には、全員について異動、希望退職や整理解雇を検討する訳ではありません。

なお、この時点で労働組合に加入したり、弁護士へ依頼する従業員が出てくることがあります。この前段階から会社側にて会社側労務専門の弁護士へ相談・依頼しておくべきです。

3.4 希望退職の募集

希望退職募集は、従業員の全部または一部を対象とし、一定の優遇措置を示して退職を希望する者を募集することをいいます。

事業所閉鎖の場合は、異動等により雇用が維持される従業員を除き、閉鎖事業場の全従業員を対象とし、集団的退職勧奨としての意味あいが強いという特徴があります。

他の事業所へ転勤させることが可能であれば、社員に対して(1)他の事業所への異動、(2)退職する場合の条件(退職金の上乗せ、再就職支援策など)を提示し、いずれかの選択をさせます。そして、⑶社員が選択を拒否した場合は、整理解雇を行うことも説明します。

現地採用の従業員は、上記(1)と⑵の選択肢を示した段階で、⑵を選択する場合が多いです。⑶については聞かれたら答えるというスタンスでも構いません。

他の事業所へ転勤させることが不可能または事実上困難な場合は、(1)他の事業所への異動させることが不可能であることの説明を行い、(2)退職する場合の条件(退職金の上乗せ、再就職支援策など)の提示します。また、⑶この提示を拒否した場合は、最終的には整理解雇を行うことも説明します。

現地採用の従業員は、上記⑵を示した段階で、応じて退職する場合が多いです。⑶については聞かれたら答えるというスタンスでも構いません。

退職に合意した場合は、退職合意書を取り交わします。

この段階で、異動及び退職合意によって閉鎖事業所の従業員の90%以上は処遇を決めることを目指します。

具体的には、以下のような内容にて従業員への募集を行います。

参考記事

5分で理解!希望退職募集の方法と注意点(書式あり)

希望退職に関する案内文

記載ポイント

  1. 工場閉鎖の経緯、希望退職を募集するに至った経緯や必要性を説明すること
  2. 希望退職の募集条件
  3. 今後のスケジュール等

工場閉鎖のお知らせ

退職条件

ポイント

  • 募集要領は出来るだけ具体的に各条件を記載しましょう。具体的には、上記参考記事を参照してください。
  • 退職する前にどのような待遇が得られるのか、具体的に分かるように記載しましょう。
  • 対象除外する者(異動を命じた者、パート社員等)を明記しましょう
  • 希望退職制度が応募すれば必ず適用されるとの誤解がなされないように注意事項を記載します。

退職条件

工場閉鎖に伴う希望退職を募集するための書式はこちら

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3.5 退職勧奨

上記希望退職の募集に応じない従業員には、個別に,面談の上,退職勧奨を行います。

退職金のさらなる上乗せは、既に退職に応じた社員との公平の観点から基本的には行いません。

ごねた方が退職金が上乗せされた場合、それを知った素直に退職に従った社員が不満に思うことが多いからです。

ただ、整理解雇を行う直前のタイミングでは、退職金を僅かに上乗せすることを検討する場合もあります。その場合は、必ず退職合意書に守秘条項を付けます。

希望退職への応募や退職合意書はこちら

5分で理解!希望退職募集の方法と注意点(書式あり)

4 整理解雇の検討

4.1 基本的な考え方

事業所の閉鎖に伴い、その事業所で勤務していた社員が自主退職するか、または、他の事業所へ異動(転勤)できた場合は整理解雇の問題にはなりません。しかし、他の事業所に閉鎖した事業所の人員分の人員の空きがなく、会社全体として人員に余剰が生じた場合は、余剰人員を整理解雇する必要があります。

整理解雇については、一般的な整理解雇4要件(要素)を検討することはもちろんですが、特に事業所の閉鎖の場合は、人選の合理性に注意する必要があります。つまり、整理解雇の対象者の人選においては、閉鎖する事業所の社員を優先的に選抜するのではなく、全社員を対象に人選を行わなければならないのです。

整理解雇の進め方は後記4のとおりです。

4.2 会社の財務状況が悪化している場合

会社の財務状況が相当悪化しており,閉鎖する事業所の社員を他の事業所へ異動させる費用を負担することが困難な場合まで,閉鎖事業所の社員を他の事業所の社員と同列に扱う必要はありません

あくまでも会社の事業存続が最優先目的となりますので,その目的実現を困難にしてまで閉鎖事業所の社員を他の事業所へ異動させて雇用を維持することまでは求められないからです。

例えば,東京本社,大阪支店,博多支店を有する会社で,博多支店を閉鎖する場合,会社に財務的な体力が無いにもかかわらず,博多支店の社員を東京や大阪へ異動させてまで博多支店の社員の雇用を維持することまでは求められません。博多支店からの異動には,生活拠点の移転,転居費用,単身赴任等の手当など多くの費用がかかるのが一般だからです。

ただし,異動コストを拠出するだけの財務力がある段階では,原則どおり東京本社,大阪支店,博多支店の全社員を対象に整理対象を選別する必要があります。

もっとも,実務的には博多支店から東京・大阪への異動はコストや負担がかかりますし、博多支店の社員のうち一定数は他の支店への転勤を希望しないことも多いので、博多支店の社員を対象に上乗せ退職金を提示した上で希望退職の募集や退職勧奨が行われるのが一般です。

上記3.1では、「閉鎖する事業所の社員を優先的に選抜するのではなく、全社員を対象に人選を行わなければならない」と記載しましたが、それはあくまでも「整理解雇」をする局面での話であり、整理解雇前に希望退職の募集や退職勧奨をする段階では、閉鎖する事業所の従業員を優先的に対象とすることは問題ありません。

4.3 勤務地が限定されているが特定されている場合

現地採用の労働者のように、雇用契約上、勤務場所が明確に限定されている労働者(勤務地限定社員)がいます。勤務地限定社員を転勤させるには,労働者の個別的同意が必要となり、使用者は一方的に転勤を命ずることはできません

では、事業所を閉鎖する場合、その事業場で勤務する勤務地限定社員を他の事業場への検討をせずに整理解雇してもよいでしょうか?

理屈の上では、契約によって勤務地が限定されているので、勤務地以外への転勤命令を受けない代わりに、勤務地での業務が消滅すれば、雇用契約は終了(解雇)となるのが筋です。

しかし、裁判所は勤務地限定社員であっても、解雇回避努力の一環として、他の事業所への異動を検討することを要求していると考えた方が無難です(後記シンガポール・デベロップメント銀行〔本訴〕事件=大阪地判平12.623労判786-16)。

具体的な対応
① 事業所閉鎖の場合は、整理解雇を回避して雇用を維持するべく、他の事業場への転勤の可能性を検討する。
② 他の事業所へ転勤させることが可能であれば、勤務地限定社員に対し、(1)他の事業所への異動、(2)退職する場合の条件(退職金の上乗せ、再就職支援策など)を提示し、いずれかの選択をさせる。そして、⑶勤務地限定社員が選択を拒否した場合は、整理解雇を行います。
③ 他の事業所へ転勤させることが不可能または事実上困難な場合は、(1)他の事業所への異動させることが不可能であることの説明を行い、(2)退職する場合の条件(退職金の上乗せ、再就職支援策など)の提示し、⑶この提示を拒否した場合は、最終的には整理解雇を行います。

※ 以上は勤務地限定の正社員の場合の対応になります。勤務地限定された現地採用のパートなど非正規社員については、転勤等の検討なく整理解雇を行うことを検討可能と考えます。

4.4 職種が限定されている場合

専門職など職種を限定して採用された社員は、この職種を一方的に命令によって変更することはできません。例えば、医師、看護師、ボイラー技士などの特殊の技術、技能、資格を持っている人については職種の限定があるのが普通です。

職種の限定がある場合は、場合を分けて検討します。

閉鎖する事業所だけにその職種があった場合

この場合、事業所の閉鎖によって契約した職種が会社から無くなります。よって、原則的には業務消滅を理由に整理解雇を行うことになります。もっとも、実際には、(1)整理解雇の前に、他の事業所で別の職種での雇用維持が可能である場合はその提示を行う、(2)退職する場合の条件(退職金の上乗せ、再就職支援策など)を提示し、いずれかの選択をさせます。そして、⑶職種限定された社員が選択を拒否した場合は、最終的には整理解雇を行います。

他の事業所にもその職種がある場合

この場合は、転勤によって雇用を維持することが可能となります。ただ、他の事業所のその職種の空きがなく、会社全体としてその職種について余剰人員を生じている場合は、前記3.1のとおり会社全体のその職種の社員を対象として整理解雇を検討します。もっとも、前記のとおり閉鎖する事業所の社員を対象に上乗せ退職金を提示した上で希望退職の募集や退職勧奨が行われるのが一般です。

他の事業所にもその職種があるが勤務地も限定されている場合

この場合は、前記3.3 勤務地が限定されているが特定されている場合に準じた対応をします。

4.5 整理解雇の実施

最終的には整理解雇を実施します。

整理解雇通知(事業所閉鎖)

工場閉鎖に伴う希望退職を募集するための書式はこちら

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解雇については労務専門の弁護士へご相談を

弁護士に事前に相談することの重要性

事業所の閉鎖に伴う退職勧奨や解雇については、労働者の雇用契約上の地位を奪うという性質上、労働者保護の観点から法律による厳しい規制がなされています。

判断を誤った場合や手続にミスがあった場合などは、事後的に社員(労働者)より地位確認・未払賃金請求等の訴訟を起こされるリスクがあります。会社に不備があった場合、復職や過去に遡って賃金の支払いや慰謝料の支払いを余儀なくされる場合があります。

また、労働者は、退職勧奨や解雇をきっかけに労働組合に加入をして団体交渉を求めたり、弁護士に依頼して法外な請求を行う場合があります。

このようなリスクを回避するために、当サイトでは実践的なコンテンツを提供しています。

しかし、実際には、教科書どおりに解決できる例は希であり、ケースバイケースで法的リスクを把握・判断・対応する必要があります。法的リスクの正確な見立ては専門的経験及び知識が必要であり、企業の自己判断には高いリスク(代償)がつきまといます。

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詳しくは

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詳しくは

労務専門弁護士の顧問契約 をご参照ください。

参考裁判例

事業所の閉鎖を理由とした解雇が有効と判断された事例

東洋水産川崎工場事件

横浜地方裁判所川崎支部判決 平成14年12月27日 労働経済速報1832号3頁

労働者XらはY社の工場に期間の定めなく雇用されていた従業員である。Y社は工場の老朽化による安全面での問題や,品質管理上の問題,環境悪化等の理由から,工場閉鎖を決めた。工場閉鎖に伴い,この工場に勤務する従業員XらにはY社の企業グループ内で可能な限り就労先を斡旋すると告げたが,Xらはこれを拒否し,解雇された。このことからXらはYに対し,雇用契約上の地位確認と賃金の仮払いを請求した事案である。本件解雇において,工場閉鎖を決定したY社の経営判断には合理性があり,解雇回避努力も尽くされていたといえる。また,Y社は労働組合と団体交渉を行い、事前に解雇理由等の説明を尽くし,対応も不当なものではない。加えて,Y社は割増退職金を支払うこと,転居費用を負担すること,再就職先の斡旋に協力する等,告げていた。以上のことから,Y社の行った解雇は,解雇権を濫用したとは認められず,解雇有効と判断された。

シンガポール・デベロップメント銀行事件

大阪地判平12.6.23労判786-16

外資系銀行の国内における二つの支店のうち、一方の支店の閉鎖に伴う従業員の整理解雇につき、他方支店において希望退職者を募集しなければ解雇回避努力義務を尽くしたことにはならない等とする原告らの主張が退けられ、整理解雇の四要件を満たした有効なものとして、地位確認等を求めた原告らの請求が棄却された例

「被告の企業規模は,平成11年5月当時,支店長, 副支店長2名を含めて21人という比較的小さいもので, しかもその業務には,外国の金融機関という性格から,専門的な知識や高度な能力を必要とする部門があり,誰にでもなし得るような業務の担当者は更に少なかったと認められ,右のように従業員の人数が少ない職場では,従業員の意向を把握することは容易であり,被告においても, その意向を把握のうえ,東京支店の従業員の自然減による減少を予定していたものと窺える。
右のように,小規模な人員しかいない職場において希望退職を募ることは,これによって原告らを就労させることができる適当な部署が生じるとは必ずしもいえないうえ,代替不可能な従業員や有能な従業員が退職することになったりして,業務に混乱を生じる可能性を否定できず,希望退職の募集によって、従業員に無用の不安を生じさせることもあるし,希望退職を募る以上通常の退職より有利な条件を付与することになるが, 自然減による減少に比べて, 費用負担が増加することになる。また,原告らが就労可能な部署が生じたとしても,東京支店への転勤は住居を移転した転勤となり, これに伴い費用が生じるが,原告らはその住居費帰省費用などの被告負担を主張しており,被告がこれに応じれば, それは被告にとって負担となり,応じない場合には, 原告らが転勤に応じるとは限らないから, その場合,希望退職を募ったことは全く無意味と
なる。これらの不都合を考慮すれば,被告が東京支店において希望退職の募集をしなかったことをもって,不当ということはできない」

事業所の閉鎖を理由とした解雇が無効と判断された事例

国際信販事件

東京地方裁判所判決 平成14年7月9日 労働経済速報1815号17頁

Y社は個品割賦事業部と旅行事業部から成り立っている。労働者Xは,Y社の旅行事業部に勤務していた。経営上の理由から,Y社は旅行事業部の廃止を決定し,それに伴い旅行事業部に勤務する従業員を会社都合で解雇する旨を告げた。そこで,Xは会社Yに対し雇用契約上の地位確認を請求した事案である。

本件解雇において,Y社に旅行事業部を廃止すべき高度な必要性は見られず,仮に廃止すべき理由があったとしても,Xを他の部門で吸収する余地がなかったとも言えない。また,Y社はXの配転可能性の有無を検討したことはなく,Xに配置転換を提案したこともなかったことから,Y社が解雇回避努力を尽くしたとはいえない。加えて,Y社はX及びXの所属する労働組合との間で十分な説明や協議もなされなかった。Xが正社員でなく時給社員であることを考慮しても,本件解雇は客観的合理性を欠くものであるから,解雇権の濫用として解雇無効と判断された。

東洋印刷事件

東京地方裁判所判決 平成14年9月30日判決 労働経済速報1819号25頁

Y社は印刷加工一般を請け負う会社であり,労働者Xら4名はY社の電算室に勤務していた。Y社は印刷の受注量が減る等,経営上の理由により,Xらを解雇する意思表示をした。そこで,Xらは雇用契約上の地位確認を請求し提起した事案である。

本件解雇においてY社は長期構造的な経営不振から,対策を講じる必要はあるものの,さほどには切迫していなかった。Xらの所属する電算部門が,不採算部門であり対策を立てる必要性は認めるものの,Xらを他の部門に配転する等,解雇を回避する努力が尽くされなかった。よって,本件解雇は権利濫用に該当し,解雇無効と認められた。

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件

那覇地判昭60.3.20労判455-71

営業所を閉鎖するか否かは企業の経営の自由に属するとされた例

沖縄営業所を閉鎖し、その業務をツーリスト会社に委ねることとするとともに、右営業所の従業員を全員解雇し、右ツーリスト会社に移籍させるものとしたことにつき、右解雇は、解雇回避努力、人選の合理性、組合との協議義務のいずれにも反するもので、無効であるとされた例

 

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