希望退職の募集には、その後に行われる可能性がある整理解雇を含めて、様々なリスクがつきまといます。そこで、希望退職の募集の方法と注意点について、書式とともに分かりやすく説明します。
希望退職の募集とは
希望退職の募集とは、人員整理の一手段であり、従業員の全部または一部を対象とし、通常は一定の優遇措置を示して退職を希望する者を募集することをいいます。
この募集に応じて、社員が応募し、会社との間で通常より優遇された退職金などの条件を合意して退職することになりますので、法的には合意退職の一種になります。
人員整理の手段には、一般に、次の9つの方法があります。
②出向
③転籍
④派遣社員の削減
⑤契約社員・パート社員の雇止め
⑥内定取消し
⑦希望退職募集
⑧退職勧奨
⑨整理解雇
希望退職者の募集は、⑧退職勧奨、⑨整理解雇の前段階の方法としてよく行われます。これは、いきなり⑧退職勧奨をすることで社員との間の緊張状態から紛争に発展する危険性を減らすという意味と、希望退職を実施した方が⑨整理解雇の有効性との関係で解雇回避の努力義務を尽くしているとの判断を受けやすいという点から行われるのです。
希望退職募集のメリット・デメリット
では、希望退職にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
人件費の削減ができる
余剰人員となっている社員を退職により削減することで、高い人件費削減効果があります。この点は説明の必要はないでしょう。
相対的にリスクが低い
退職勧奨の場合は、ターゲットを定めて個別に退職を勧めることになりますので、社員に与えるプレッシャーも強く、トラブルの発展することがあります。整理解雇の場合はターゲットとなる社員に対して一方的に労働契約を解消することになりますので、裁判や労働審判に発展する可能性が高まります。
これらに対し、希望退職の募集は、応募した社員が納得して合意の上で退職することが前提となります。それゆえ、退職が争われるリスクが低いのです。
デメリット
一時的にコストがかかる
希望退職の場合、通常の退職金に退職加算金を上乗せすることが一般です。その余分なコストが発生します。
ただ、中長期的にみた場合、人件費の削減になることは間違いありません。たとえば、退職加算金を1年分の年収とした場合でも、給料が高く会社の業績に貢献していない余剰人員をカットすることは、単純に考えて、2年目以降はプラスになります。
優秀な社員が退職する可能性があること
希望退職募集は広く社員に対して募集をしますので、本来辞めてほしい社員だけでなく、辞めてほしくない優秀な社員まで退職してしまうことがあります。これに対しては、希望退職の応募しても、会社の承諾がなければ成立しない仕組にすることで回避は可能です。もっとも、一度応募すると、企業に対する忠誠心は低下し、信頼関係も傷付くのが普通です。そこで、残ってもらいたい優秀な社員を残す工夫が必要となります。
希望退職の募集条件
希望退職を行う場合は、前提として募集条件の設定が重要となります。希望退職は合意ベースで行われますので、その募集条件につき法的な規制は特にありません。それゆえ、基本的には自由に募集条件を設定できます。もっとも、自由に設定できるとしても、社員に全くメリットのない条件では応募を得ることができず、希望退職の募集は失敗します。そこで、各条件について、ポイントを説明します。
対象者の範囲
募集対象者の範囲については、全社員を対象にすることも、部門(事業所)や年齢層を限定して募集することも可能です。
対象者の範囲限定の本質的な基準は、事業の継続にとって必要な戦力となるか、コストパフォーマンス(貢献度に比べ賃金水準が高いか否か、異動に伴うコストがかかるか)です。
具体的には、以下のような基準が用いられることが多いですが、各企業の実情に応じて、残したい戦力を対象から除外するために組み合わせます。
- 年齢・・・一定年齢以上、あるいは一定の年齢範囲の社員を対象とする(例:45歳以上、50歳以上55歳以下など)
- 職種・・・総合職、技術職、営業職、事務職、技能職などの職種別
- 等級・・・職能資格等級上の等級別(一定等級以上の管理職社員を対象とする場合に、管理職該当等級以上を対象とする例が多い)
- 勤続・・・一定の勤続年数以上の社員を対象とする
- 組織・・・特定の事業場や部門、組織などを対象とする
例えば、本社(東京)と名古屋事業所、大阪事業所、福岡事業所のある企業があるとします。不採算である名古屋事業所の規模を縮小し、福岡事業所は廃止する場合は、名古屋事業所の一部と福岡事業所の全体を対象とします。また、貢献度に比べ賃金水準が高い年齢層である40代・50代を対象とします。
募集人数
募集人数についても自由に設定できますが、基本的選択肢としては、①明確に設定する、②全く設定しない、③設定するが明確にしない、 の3つです。
① 明確に設定する
明確に募集人数を設定することで、社員に対し、削減の数値目標を明確にし、達しない場合には二次・三次募集、退職勧奨を経て最終的には整理解雇もありうるとの強い姿勢を示すことになります。他方で、明確にしたがゆえに、会社はそれに拘束され、目標人数に到達しない場合は到達するまで人員整理を行う必要があります。また、募集が設定人数をオーバーした場合は、設定人数に到達した段階で募集を打ち切る必要があります。
② 全く設定しない
全く設定しない場合は、会社は人数に拘束されませんが、社員に緊張感がなくなり、人員削減目標を達成できない可能性が高まります。
③設定するが明確にしない
そこで、例えば、「100名程度」「80名以上」というように、幅を持たせて設定することがよく行われます。一定の目標数値を出すことで、会社の人員整理に向けた姿勢を伝え社員に緊張感を持たせることができ、かつ、設定に幅を持たせているのである程度柔軟に募集人数を調整できます。
承諾要件
希望退職のデメリットとして、会社としては優秀な人材まで応募して退職してしまうことがありました。
そこで、あくまでも会社が承諾した場合に限り成立することを条件とします。
もっとも、一度応募すると、企業に対する忠誠心は低下し、信頼関係も傷付くのが普通です。そこで、残ってもらいたい優秀な社員を残す工夫が必要となります。
残ってもらいたい人員(キーマン)の慰留の方法については、書式「希望退職面接マニュアル(キーマン用)」をご参照ください。
募集期間
募集期間は企業の実情に応じて設定しますが、通常は2週間から3週間程度とする例が多いです。
ただ、この期間はあくまでも募集の期間であり、その前提として社員全体への説明・個別面談による周知を行いますので、それらの準備期間を含めると社員には2週間から1ヶ月程度の検討期間を与えるのが適当です。
民間データ
希望退職の募集期間
1位 15日~21日間(40%)
2位 8~14日間(21.2%)
3位 22日~28日間(10.6%)
希望退職の公表から募集開始までの期間
1位 7日以内(17.6%)
2位 15~21日(16.5%)
3位 29~35日(10.6%)
※ 労務行政研究所 労政時報4104号(21年5月)「コロナ禍における希望退職募集の実施状況」
なお、募集期間については、10日間としたことが性急に過ぎるとした裁判例(ジャレコ事件 東京地判平成7年10月20日)や、4日間としたことが短すぎるとした裁判例(高松重機事件 高松地判平成10年6月2日)がありますが、ケースバイケースですので、この日数が常に違法という訳ではないです。
特別退職金
希望退職の募集に際しては、通常の規定退職金のほかに、特別退職金の上乗せをするのが通常です。この特別退職金が希望退職の募集の最大のインセンティブといっても過言ではなく金額の設定は非常に重要です。
では、特別退職金はいくらにするべきでしょうか。
特別加算金の平均額(従業員規模別)
300人未満 258万円
300~999人 420万円
1000人以上 835万円
※ 労務行政研究所 労政時報4104号(21年5月)「コロナ禍における希望退職募集の実施状況」
特別退職金の金額設定については、詳細なノウハウがありますが、ポイントとしては次のとおりです。
まず、当然のことながら原資となる予算がありますが、各企業の資金状況(資金繰り)次第で特別退職金の予算の上限が決まります。
次に、金額設定については、各企業で辞めてほしい層のインセンティブとなる金額設定とします。例えば、賃金が割高になっている高い年齢層に退職のインセンティブを付けために、勤続年数や年齢に傾斜して条件を設定します。
例えば、次のように設定します。
55歳以上:基本給✕4ヶ月
40歳以上55歳未満:基本給×3か月
30歳以上40歳未満:基本給×2か月
30歳未満:基本給給×1か月
勤続年数別加算金額
勤続年数15年以上:基本給×4か月
勤続年数7年以上15年未満:基本給×3か月
勤続年数3年以上7年未満:基本給×2か月
勤続年数3年未満:基本給×1か月
最後に、将来的に追加で希望退職や退職勧奨を予定している場合、先に行った希望退職の特別退職金の金額が事実上基準となってしまうことがあることに注意が必要です。
すなわち、希望退職の条件は他の社員も認識することが通常です。そして、将来的に希望退職や退職勧奨を実施した際、先行した希望退職の特別退職金の金額より低い金額を提示した場合、「前に実施した希望退職では基本給の○ヶ月分と聞いていた。それより低いのはおかしい」などという反応をすることがあるのです。
もちろん、希望退職の条件は、それを実施する時点における会社の業務の状況や財政状況に左右されるのは当たり前です。しかし、そのことを理解している社員は少なく、素朴な感覚として「前に実施した希望退職での条件」が頭に残ってそれを基準にしてしまう傾向があるのです。このような社員の感覚から、先行する希望退職で高い水準の特別退職金の金額を設定してしまうと、それより低い水準の特別退職金の金額を提示すると応募が集まらないことがあるのです。
経過賞与、有給買取、再就職支援
経過賞与
ほとんどの企業では、賞与については就業規則(賃金規程ないし賞与規程)に支給日在籍要件の定めをしています。つまり、賞与の支給日に在籍していない者には賞与を支給しないという定めです。
希望退職募集に応募した場合の退職日が賞与の支払日よりも前でかつ近いと、応募人数に影響します。
たとえば、ある会社の夏季賞与の査定期間が前年12月1日から当年5月末日、支給日が7月1日で支給日在籍要件が設定されていたとします。
この場合、希望退職の募集を4月1日から開始し、5月末日が退職日であるとすると、希望退職募集に応募すると、夏季賞与の算定期間在籍したにもかかわらず、夏季賞与の支給がなされないことになり、応募を控える可能性が高まります。
そこで、賞与の支給日在籍要件の関係で応募控えが出ないように設定するのが経過賞与の考え方です。
上記例でいえば、希望退職に応募して5月末に退職する場合は、7月1日支給予定であった賞与を満額支給することを希望退職の条件として設定します。
実際の経過賞与の設定にあたっては、
経過賞与額を、①一律金額を設定するか、②直前の賞与実績で決めるか、③各人で査定して決めるかという点や、
賞与算定期間途中での退職の場合に、在籍期間の割合で支給するか(例えば、上記例で3月末が退職日の場合は、6分の4の割合で支給する)
などを検討します。
有給の買取り
まず前提として、希望退職を実施する際に有給の買取が義務というわけではありません。
もっとも、希望退職は募集の開始(公表)から退職まで1ヶ月程度であることが多く、希望退職に応ずる場合に残有給を全部消化するとなると、会社は法的には応じざるを得ません。そうなると、希望退職に応じた社員に引継ぎをしてもらう時間がなくなり、業務に支障が生ずる場合があります。
そこで、引継ぎ等の残務を行ってもらう必要がある場合は、年休の買い取りを応募者に提案して、社員が応ずる場合は合意します。
合意では、買い取りの日数や単価について具体的に定めます。
再就職支援
希望退職へ応募するに際して、再就職は社員の重大な懸念事項です。再就職への不安から応募を控えることはよくあることえす。
そこで、このような社員の不安を緩和し希望退職への応募をしやすくするための配慮が再就職支援です。
再就職支援は、①当該会社のグループ企業や関連企業への再就職のあっせんや、②再就職支援企業を会社の費用負担で利用できるようにすることが、よくある方法です。
①の再就職あっせん
再就職のあっせんは、あくまでも再就職先をあっせんするだけであり、再就職を確約するものではありません。あっせん先企業の採用基準によって採否が決定されますので、確実に再就職できるという誤解を与えないように注意が必要です。
あっせんにより再就職できた場合は、特別退職金の金額を低く設定するという方法もあります。
②再就職支援企業
希望退職の募集や退職勧奨に際して、退職条件の1つとして、企業の負担で再就職支援企業を利用できることを加えることはよくあることです。
ただ、再就職支援企業のサービス内容は、企業が負担する費用に応じてピンキリです。会社の予算の範囲内での利用となります。
なお、再就職支援会社へ支払う費用は、社員一名あたり50万円~100万円程度と言われています。再就職支援については、国の助成金(労働移動支援助成金(再就職支援コース))が活用できますので、こちらもご検討ください。
応募者によっては、「自分で再就職先を探すので、再就職支援サービスを条件にするなら、その費用を退職金に加算してほしい」という者もいます。それに応ずるか否かは企業の選択になりますが、応じなくともよいです。
希望退職の方法・進め方
会社の業績が悪化し、企業再建のためには、一定の人数の人員整理を行う必要がある会社のスケジュール例です。
希望退職の募集から始まり、退職勧奨を経て最終的には整理解雇を予定しています。
日程 | 期間 | 手続 |
12月~1月 | 2ヶ月 | 専門の弁護士へ依頼し、人員整理全般の依頼をする。財務状況の把握、余剰人員の抽出、企業再建方針について助言を受けながら進める。 |
2月 | 1ヶ月 | 希望退職募集の条件、スケジュールの確定などの準備期間 |
3月1日 | 2週間 | 労働組合(執行部)との協議 |
3月15日~18日 | 3日間 |
|
3月20日~4月4日 | 約2週間 |
|
4月5日~7日 | 3日間 | 従業員説明会(退職勧奨の開始を発表) |
4月8日~22日 | 2週間 | 退職勧奨 期間途中に回答日を設定。 |
4月15日 | 希望退職応募者 退職日 | |
4月15日 | 整理解雇対象者に解雇予告通知 | |
5月15日 | 整理解雇日 |
※ このようなケースは、企業再生の1つのプロセスとして人員整理を行います。そのため、労務のみならず、企業再生についても専門としている弁護士への依頼が必要です。
希望退職でよく使う書式
以下では、希望退職の募集から応募まで、よく使われる書式を用意しました。
これを見れば具体的なイメージを掴んでいただけるかと思います。
書式を使うことで、希望退職のプロセスを書類で残すことができますので、法的トラブルに発展することの予防になります。
また、トラブルに発展した場合であっても、会社が適切なプロセスを踏んだことの証拠になります。
希望退職に関する案内文
希望退職を募集する際に社員へ配布する案内文となります。
従業員説明会などで配布した上で、口頭でも説明をすることが適切です。
記載ポイント
- 希望退職を募集するに至った経緯や必要性を説明すること
- 希望退職の募集条件
- 希望退職後の会社の方針
- 今後のスケジュール等
③については、主に会社に残る社員向けの記載になりますが、会社を去る社員を募集する書面に記載するのも違和感がありますので、省略可能です。
会社に残る社員向けのメッセージは、個別面談で口頭で行えば足ります。
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希望退職募集条件
ポイント
- 募集要領は出来るだけ具体的に各条件を記載しましょう。具体的には、上記記事を参照してください。
- 退職する前にどのような待遇が得られるのか、具体的に分かるように記載しましょう。
- キーマンが辞めてしまうことへの対策として、希望退職募集応諾による退職条件の割増を「会社が承認した者」に限ることにします。
- 希望退職制度が応募すれば必ず適用されるとの誤解がなされないように注意事項を記載します。
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希望退職条件確認書
ポイント
- 全体の従業員説明会で配布される募集要領だけでは、自分が希望退職に応じた場合に得られる退職条件の詳細が分かりません
- 各社員について、希望退職に応じた場合の条件、特に得られる金額の内訳や合計を記載した書面を作成しましょう
- 具体的には、社員ごとの、退職日、得られる特別退職金等の金額・振込日などを具体的に記載した文書を作成してください。
- 全体の従業員説明会後に個別面談を行い、面談で交付しつつ説明をするとよいでしょう。
- 注意事項も併せて明記しましょう。
- 希望退職条件確認書の下部に、希望退職申請書を一体化させると、具体的な条件を理解した上で希望退職に申し込んだことがより明らかになります。
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希望退職申請書
ポイント
- 希望退職募集に対する応募書類です。
- あえて、「申請」としているのは、希望退職の適用には、会社の承認(適用決定)が必要であり、当然には適用されないことを明らかにするためです。
- その他、申請にあたり労働者に確認させたい注意事項を明記します。
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希望退職制度の面接マニュアル
残ってもらいたい人の選定
希望退職は、タテマエでは広く退職者を募集する制度ですが、ホンネとしては残ってもらいたい人(キーマン)がいることは厳然たる事実でしょう。
希望退職募集の裏側では会社による「選別」が行われているのが通常です。
面接の体制・準備のポイント
- 面接は、出来るだけ希望退職募集の対象社員全員に実施した方がよい。非戦力だけや、キーマンだけと面接を実施することはしない。
- 会社側の面接担当者は2~3名がよいでしょう。職場の上司1名と人事部2名がよくある組み合わせですが、人事部2名だけでもよいでしょう。
- 面接者が人によって異なることを言わないようにマニュアルや想定Q&Aを作成して面接に臨む必要があります。
- 面接は発言内容をメモし、録音もしてください。
- 労働組合がある場合、組合は面接に反対することがありますが、その場合は無理に面接はしないでよいです。
面接マニュアル(対キーマン)
キーマンに対しては、個別面接などで事実上の慰留交渉が行われるのが通常です。慰留の仕方にも注意があります。
注意事項
- キーマンへの慰留は秘密裏に行うこと
- 全員に対して個別面談を行う際に伝えるのはOKだが、キーマンだけ会議室に呼ぶのは目立つので避けること
- 「会社の方針としてあなたをキーマンに選んだ」という確定的な表現は使わない。「会社の再建にはあなたの力が必要だと判断したので、是非残って一緒に頑張って欲しい」という程度にしておく。
面接マニュアル(非キーマン)
注意事項
- 非キーマンへの説明は、基本的には退職への誘導となるため、社員の心情に配慮して行うこと
- 業績悪化への謝罪や、これまでの貢献への感謝をまずは伝えること
- 出来るだけ不安を緩和するべく退職時の条件を丁寧に説明し、最大限の配慮をしたことを伝えること
- 中には感情的になる社員もいるが、「会社の業績悪化だから仕方がない」などとは言わず、出来るだけ言いたいことは言わせてガス抜きをすることもときには必要になる
- 強制にならないように退職勧奨一般の注意事項に準じて配慮すること
社員の合意を得るための面接マニュアルはこちら
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希望退職制度適用・不適用決定通知書
ポイント
希望退職の申請だけではなく、会社の承認が必要であることから、社員からの希望退職申請書に対して、希望退職制度の適用・不適用の決定通知書を交付します。
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退職合意書(リストラ・シンプル)
従業員が希望退職の募集に応じて退職することとなった場合、希望退職の申請書に加えて、退職願の提出を求めることで完結させる場合もあります。
もっとも、より確実に退職の条件と合意内容を明確にしておくため、退職合意書を締結することをお勧めします。
最小限必要な事項を記載した退職合意書のフォーマットです。
記載事項
- 退職合意、退職日
- 退職理由
- 退職日までの権利義務
- 特別退職金
- 債権債務がないことの確認
ファイルの入手はこちらから
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退職合意書(希望退職・オリジナル)
退職に際して、詳細な条件設定をする場合のフォーマットになります。
記載事項(★はシンプル版にはない条項)
- 退職合意、退職日
- ★希望退職に応募して退職すること
- 退職理由
- ★離職票上の離職理由を具体的に記載
- 退職日までの権利義務
- ★最終出勤日
- 特別退職金
- ★経過賞与
- ★有給休暇買い取り
- ★支払期日等の詳細、源泉控除等の明記
- ★貸与物の返還義務
- ★秘密保持誓約書への署名義務
- 債権債務がないことの確認
詳細な退職条件を記載した退職合意書はこちら
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秘密保持誓約書(退職時・シンプル版)
退職する際、秘密保持誓約書にサインしてもらいます。
記載する内容
- 退職後も秘密保持義務を負うことの確認
- 対象となる秘密の範囲
- 退職時に保有する秘密情報を返還すること
- 違反した場合の損害賠償義務
ファイルの入手はこちらから
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秘密保持誓約書(退職時・オリジナル)
より確実に秘密保持義務を負わせ、秘密保持遵守の実効性を高めるオリジナルの秘密保持の誓約書です。
記載する内容(★はンプル版との違い)
- 退職後も秘密保持義務を負うことの確認
- 対象となる秘密の範囲(★実務的に頻出の機密情報を追加し、機密情報の対象をより明確化)
- 退職時に保有する秘密情報を返還すること(★返還のみならず、退職時に機密情報を持ち出せないように、機密情報を返還し、持ち出しさせないことを明確化)
- ★秘密情報は会社に帰属すること(秘密情報は自分の権利だとの主張ができないことを明確化)
- 違反した場合の損害賠償義務(★違反した場合の違約金を定めることにより、損害の立証を軽減)
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その他問題となる対応
労働組合がある場合の対応
労働組合に関する手続条項を確認する
希望退職募集を実施する企業に多くの社員が加入する労働組合(ごく少人数の社員しか加入していない組合は除く。以下同じ。)がある場合、まず、人員削減に関する労働協約を確認する必要があります。
労働協約に、人員削減する場合、労働組合と事前に合意しなければならない(合意約款)、あるいは事前に協議しなければならない(協議約款) という条項がある場合、必ずそれを履践する必要があるからです。
労働組合との対応
合意約款や協議約款がある場合は、同約款に基づいて十分協議し(協議約款の場合)、合意に達する(合意約款の場合) ことが必要となります。
そのため、スケジュールの中でも、組合との協議等にかかる期間(状況にもよるが1ヶ月程度)をみておく必要があります。
そして、スケジュール的には、発表と同時に通知し、協議に入る場合もあれば、発表前の段階から組合執行部との間で内々に協議を進める場合もあります。
発表する希望退職募集の条件・内容も、組合との協議等によって変わってくることが予想される(先に決めると協議条項違反だと主張されるリスクがあります)ので、具体的な条件・内容の発表ではなく、人員削減が必要な状況であって実施せざるを得ない旨の抽象的な発表にとどめ、組合に対しては、組合との協議によって希望退職募集の退職条件をつめていくという流れになります。
協議がまとまったときは労働協約の締結を行う場合があります。
合意約款や協議約款がない場合でも,信義則上,労働組合(執行部)に通知・説明をし,団体交渉を求められた場合はそれに応ずる義務があります。
団体交渉において、希望退職の経緯や必要性、条件の正当性について説明することになります。
労働組合に対する協議申入書
労働組合に協議を申し入れる際は、以下のような申入書を組合へ送付してプロセスを明確にします。
労働組合へ協議を申し入れるための書式はこちら
労働組合との協議がまとまらない場合
協議約款がある場合であっても、人員削減の必要性・緊急性が高い場合は,最終的には組合側の同意なくして希望退職募集に踏み切ることが可能です(合意約款がある場合はこの限りではありません。)。
職業安定所(ハローワーク)等の手続
職業安定所(ハローワーク)には,退職日1カ月前には再就職援助計画の認定申請等(雇用対策法24条3項.25条1項.雇用対策施行法7条の3。なお.大量雇用変動届は不要(雇用対策法24条5項))を行う必要があります。そのため、従業員へ告知した段階で速やかに説明に出向き,提出が必要な書類について指示を受けるとともに,退職
が決定した者に向けたハローワークによる説明会等の実施も要請すると良いでしょう(なお,賃金未払等がない限り,労働基準監督署への説明は不要です)。
場合により自治体や商工会議所に説明に出向く場合もある(自治体,商工会議所,ハローワーク等が雇用対策会議等を設置する例がある)。また,産業雇用安定センダーの賛助会員となって,その協力を仰ぐ場合もある。
取引先への報告
大量の離職者を生ずる希望退職を実施した場合、その内容は当然のことながら取引先等関係者の知るところとなります。
そこで、信頼関係の維持の観点から、従業員に対する希望退職の募集発表後に速やかに取引先にも報告をすることがあります。
取引先との信頼関係を維持するための書式はこちら
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希望退職により目標の退職人数が達成できなかった場合
人員整理のための退職勧奨
希望退職による退職者が募集人員に満たない場合は,事前に定立した人選基準に従い退職勧奨を実施することとなります。
この人選基準は,最終的に行う整理解雇の人選基準とほぼ同一のものを準備しておきますが,希望退職募集の前段階でキーマンの選定の場面で人選基準は作成しておく必要があります。そうすることで希望退職募集の段階から一貫した基準で対応することができます。
退職勧奨が成功するか否かは,それまで会社がどの程度解雇回避努力や説明等を尽くしてきたのか,対象者に選定理由を客観的・合理的に説明できるかにかかっています。
解雇回避努力や説明義務を尽くしていれば尽くしているほど,従業員にとって退職勧奨は受け入れざるをえないものとなります(すなわち,拒否すれば整理解雇が有効となる可能性が高いといえるからです)。
退職勧奨の際に,希望退職と同条件での優遇措置を認めるかどうかは検討事項になりますが,退職条件を切り下げると対象者が退職勧奨に応じにくくなるため切り下げは困難であることが一般です。このため,希望退職の条件を維持して退職勧奨することになります(もっとも,交渉での話としては,「早々と希望退職に応募してくれた社員との関係で,本来は希望退職募集と同じ条件を出すことは難しい。しかし,特別に今退職勧奨に応ずるのであれば希望退職と同じ条件を維持します。」という話をしてもよいでしょう。)。
最終的には整理解雇
希望退職の募集や退職勧奨によっても削減人数に満たない場合は,やむをえず,事前に定立した人選基準に従い,整理解雇を断行することになります。
なお、会社が倒産状況にある場合であっても、整理解雇する場合は整理解雇法理が適用されることには注意してください。
裁判例でも、紡績業と不動産業を営んでいた会社が,再生手続開始を申立後,紡績業部門を廃業するとして,同部門に従事していた従業員をほぼ全員を解雇したことにつき,整理解雇の4要素に照らして解雇を無効とした判決がありますので注意が必要です(山田紡績事件 名古屋高判平18.1.17,労判909号5頁)。
また、整理解雇実施後に,新規に役員を迎えたり,新規の雇用を行うことにも注意が必要です。この場合,まさに人員削減の必要性があったのかが問われることになるからです。
すなわち、「人員削減措置の決定後,大幅な賃上げや,多数の新規採用や,高率の株式配当を行うなど,素人の目から見ても明瞭に矛盾した経営行動がとられた場合」に人員削減の必要性が否定され整理解雇が無効となる可能性が高いので注意してください。
まとめ
以上おわかりいただけましたでしょうか。
今回は、希望退職の募集の方法と注意点について解説しました。
ご参考にして頂ければ幸いです。