年度更新の年俸減額

年度更新で年棒額を一方的に減額することはできるか

社長
当社は年俸制を導入して3年になります。昨今の会社の業績不振と当該社員の成績不振を理由として,ある社員の次年度の年俸額を10%引き下げようとしたところ,「年俸額を一方的に減額するのは法律違反だ」と主張して紛争となりつつあります。会社が年俸額を一方的に変更することはできないのでしょうか。
弁護士吉村雄二郎
年俸制は成果主義賃金と直結することにより,従来の職能資格給制度での人事考課と比較して,評価の重要性が増すことになります。したがって,その評価が公正であること,具体的には,評価基準の設定・公開,評価行為の客観性,評価結果の開示,評価結果に対する異議申立制度の設定など,細則を作成して公正な制度運用をしていくことが紛争予防のためにも重要です。
従来の人事考課においても,労働者の包括的な事前同意によって人事考課およびそれに基づく賃金の決定権が使用者に与えられてきました。年俸制においても同じように,年俸額の最終的な決定権は使用者にあると考えるのが相当でしょう。年俸額の切下げについて,一般的な限度基準はありませんので,個々の事案において,減額の限度が判断されることになります。当該企業における年俸制の運用の実態,導入の経緯,年俸額の水準,公正手続の程度などを総合勘案することになります。もっとも,年功序列型賃金や職能資格給制度とは異なり,成果主義賃金においては,賃金の増減が当初から予定されていることから,公正手続きの担保がなされている限り,その増減の幅は比較的大きなものが許容されています。

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