裁判員と賃金

裁判員に選任された場合の賃金の取り扱い

社長
当社の社員が裁判員に選ばれたとして,公判に出席するための休暇,賃金保障および不利益取扱いの禁止を求めてきました。当社の就業規則や労働協約には,裁判員選任に伴う労働時間や賃金の扱いについて具体的な規定をおいておらず,前例もありません。出席した日には国から日当も出るようですが,企業としても賃金保障を行う必要があるのでしょうか。
弁護士吉村雄二郎
労働者が裁判員に選任された場合には,勤務先の会社を休まねばならないという事態が生じます。労基法7条は,「使用者は,労働者が労働時間中に,選挙権その他公民としての権利を行使し,又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては,拒んではならない。但し,権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り,請求された時刻を変更することができる。」と定めています。裁判員としての職務もこの条文における公の職務に該当します。よって,会社は,労働者から裁判員としての活動のために休暇の申請があった場合には,基本的にこれを認めなければなりません。裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと,その他裁判員等であることを理由として解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁じられています。
さらに,裁判員としての活動のための休暇を取得した場合,会社は賃金を支払わねばならないか(すなわち,有給で休暇を与えなければならないか)も問題となります。これについては,従来から,かかる休暇の取得について賃金の支払いは義務づけられない(すなわち,休暇は無給でかまわない)とされています。ただし,就業規則などで有給休暇を付与することとしてももちろん差し支えありません。

 

労働問題に関する相談受付中

営業時間:平日(月曜日~金曜日)10:00~18:00 /土日祝日は休業