当社で,即戦力となる中堅クラスの営業マンを採用するにあたり,雇用開始日から1年以内に自己都合により退職した場合には返還するという条件で奨励金(サイニングボーナス)の150万円を支給しています。そうしたところ,入社して半年の営業マンが,突然退職することになりました。そこで,採用当初の約束に従って,ボーナスの返還を求めたところ,本人は,ボーナスの返還を拒否しています。全額返還を求めるのが問題なのであれば,本人が就労していた半年分相当は減額して75万円の返済を求めたいと考えています。
また,当社では.長期報償制度として,通常の賞与とは別に,2年間の勤務評価をポイント化して累積し,一定基準に達した者に特別賞与を支給しています。そこで,ある社員が,退職するにあたり,これまで積み立てた1年半分の特別賞与ポイントを換金してほしいと言ってきました。断ったところ.この社員からは,当社の長期報償制度は,労働基準法違反だと主張しています。どうなのでしょうか。
また,当社では.長期報償制度として,通常の賞与とは別に,2年間の勤務評価をポイント化して累積し,一定基準に達した者に特別賞与を支給しています。そこで,ある社員が,退職するにあたり,これまで積み立てた1年半分の特別賞与ポイントを換金してほしいと言ってきました。断ったところ.この社員からは,当社の長期報償制度は,労働基準法違反だと主張しています。どうなのでしょうか。
一般的に,賞与は,一定の評価対象期間の勤務成績等の査定に基づいて支給されることから,当該期間の労務の提供に対する賃金の後払い的性格を有するといわれています。この点については,サイニングボーナスは,雇用契約締結時に支払われていること,また,一定の期間の勤務成績等の査定に基づいて具体的金額が決定されるわけではないこと等からすれば,賃金の後払い的側面は認められず,あくまでも,会社と労働者とが雇用契約の成約を確認し,勤労意欲を促すことを目的として交付される「支度金」のようなものです。「1年以内に自己都合退職した場合には返還する」ということは,労働者側からしてみれば,1年間勤務を継続しなければならなくなり,その意思に反して勤務を継続することを余儀なくされることになります。
そして,このような退職の自由を制限する足止め策は,労基法5条の強制労働の禁止や,「使用者は,労働契約の不履行について違約金を定め,又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」として賠償予定を禁止した16条に照らし問題がありますので,返還を求めることはできません。
次に,長期報償制度として,2年間の勤務評価をポイント化し,累積させて,一定の基準を満たした場合に,特別賞与を支給する制度については,特別賞与の具体的支給額が確定するのが,2年目になることから,それ以前に退職する社員に対して,勤務期間に応じて特別賞与を支給する必要があるか否かが問題となります。
ご質問の特別賞与は,2年後になって,初めて支給基準を充足したか,それに基づく支給額がいくらかが確定し,特別賞与の具体的請求権が発生します。期間途中の退職者には特別賞与の具体的請求権は発生していませんし,ポイント数が支給基準を満たすかどうかが不明なのに,もらえるかどうかわからない特別賞与を得るために意思に反して勤務を継続することは通常考えられないので,退職の自由を制限することにはならず,特別賞与を支給する必要はありません。
そして,このような退職の自由を制限する足止め策は,労基法5条の強制労働の禁止や,「使用者は,労働契約の不履行について違約金を定め,又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」として賠償予定を禁止した16条に照らし問題がありますので,返還を求めることはできません。
次に,長期報償制度として,2年間の勤務評価をポイント化し,累積させて,一定の基準を満たした場合に,特別賞与を支給する制度については,特別賞与の具体的支給額が確定するのが,2年目になることから,それ以前に退職する社員に対して,勤務期間に応じて特別賞与を支給する必要があるか否かが問題となります。
ご質問の特別賞与は,2年後になって,初めて支給基準を充足したか,それに基づく支給額がいくらかが確定し,特別賞与の具体的請求権が発生します。期間途中の退職者には特別賞与の具体的請求権は発生していませんし,ポイント数が支給基準を満たすかどうかが不明なのに,もらえるかどうかわからない特別賞与を得るために意思に反して勤務を継続することは通常考えられないので,退職の自由を制限することにはならず,特別賞与を支給する必要はありません。